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薬剤感受性 Susceptibility to drug
感受性の低下は抵抗性、あるいは耐性という。しかし逆に「耐性がない」ことは、必ずしも「感受性がある」ことを保証するものではない。
薬剤耐性 Drug resistance; tolerance
薬剤耐性検査 Drug Resistance Testing
【概要】薬剤耐性であることを試験管内で証明する検査。(1)酵素の構造を決める遺伝子配列に変異が生じ、(2)酵素の立体構造に変化が生じ、(3)酵素の阻害薬がうまく反応できなくなって耐性となる。(1)を調べるのが「遺伝子型検査」でウイルスの遺伝子配列を決定し、耐性関連変異がないか確認する。(3)を調べるのが「表現型検査」で、培養細胞に抗HIV薬を加えて抑制力の有無と程度をみる。臨床的には頻用されているのは遺伝子型検査であり、結果も2週間程度でわかり、再現性もよい。複数の異常が加わると解釈が難しく、耐性の推定には情報の蓄積が必要である。薬剤耐性検査は初診時、治療開始前、治療失敗で薬剤変更をする前に実施する。
薬物依存症 Drug addiction
薬物血中濃度 Drug concentration
抗HIV薬の血中濃度を測定する目的は、(1)服薬アドヒアランス、(2)治療効果、(3)薬物相互作用、(4)副作用の発生、(5)耐性HIV発生の監視。核酸系逆転写酵素阻害薬は細胞内にとりこまれた後に作用するので、血中濃度よりも、細胞内の濃度の動きが大切である。これに対し、非核酸系逆転写酵素阻害薬やプロテアーゼ阻害薬、インテグラーゼ阻害薬は元の形、あるいは活性型の誘導体が作用するので、血中濃度測定が有益である。
薬物相互作用 Drug interaction
【概要】少なくとも2薬剤を併用したときに、一方の薬物単独ではみられない有害な作用が発現したり、逆に効果が減弱したりすることがある。このような薬の飲みあわせ不良を相互作用という。相互作用は薬だけでなく、飲食物や嗜好品も関係する。グレープフルーツジュースやアルコールが有名。
薬物代謝 Metabolism of drug
【概要】薬が体内で化学処理されて別なもの変わることを薬物代謝という。主に肝細胞内にある酵素によっている。代謝を受けた後は、脂溶性のものは水溶性の物質に変わり尿から捨てられ、脂溶性のままのものは胆汁から捨てられる(排泄)。一般に小児、成人、妊婦、老人などで肝臓の代謝能力に違いがある。また重い肝臓病では代謝能力が落ちていることが多い。
薬物転送 Drug transport
【概要】薬物を含め脂溶性の高い物質は生体膜を受動拡散により通過する。したがって生体機能を維持するためには細胞内に入ってきた物質を、管腔側へ積極的に排泄する働きが必要になる。その一つが細胞からの排泄トランスポーターである。この増減が、血中薬物濃度曲線に影響を与え、薬物相互作用のメカニズムの一つになる。
薬物動態 PK: Pharmacokinetics
【概要】薬は使用経路により、吸収(adsorption)、分布(distribution)、代謝(metabolism)、排泄(excretion)など複雑な動きをする。それぞれの分布部位ごとに、薬物の濃度、濃度の時間に対する変化などを動的に解析すること。薬物動態は、薬物そのものの様々な特性(物理化学的性質)や剤形、患者自身の病態特性、生理的要因(年齢、妊娠)などにより大きく変動する。さらに、他の薬を併用していると、特に吸収、代謝過程などでお互いに影響を及ぼす(薬物相互作用)ことに注意しなければならない。PKは体の側が薬に対する作用である。これに対しpharmacodynamics(PD)は薬の側が体に対する作用である。
薬物分布 Drug distribution
【概要】薬物が血液に運ばれて体内の様々な部位に移行すること。これを薬物分布という。