【概要】射精によりペニスから排出される液体。精巣で作られる精子と、精のう腺、前立腺などで作られる精漿の混ざったもの。通常液量は2mL以上、総精子数(液量×濃度)は4,000万以上、白血球数は100万/mL以下である。精漿は精子を守り精子に栄養を与えている。HIV感染者の精液の中でHIVが存在するのは精漿の部分と白血球の一部。精子の表面に接着していることはあるが洗浄すればはずれる。またきちんと抗HIV治療をしている人の精漿にはHIV粒子がいなくなる。精子の中にHIVはいない。つまり授精のときに直接卵子(後の胎児)がHIVに感染することはない。

【概要】生活保護は、生活に困窮する世帯に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、最低生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする福祉制度である。世帯の生活費が、国が定めた最低生活費を下回った時にその不足分が保障される。申請先は福祉事務所。資料調査が行われ、それを基に保護の要否が判定され、決定される。

【概要】性行為による感染症。性行為感染症とも言う。主なものとして淋病、梅毒、クラミジア症、軟性下疳、鼡径リンパ肉芽腫症、陰部疱疹(単純性ヘルペス)、尖圭コンジローマ、伝染性軟属腫、腟トリコモナス症、外陰・腟カンジダ症、疥癬、毛じらみ症などが代表。これ以外にウイルス性肝炎、マイコプラズマ症、ウレアプラズマ症、サイトメガロウイルス症、赤痢アメーバ症、HTLV-1、HIVなど。

【概要】単純性疱疹、陰部ヘルペスとも言う。単純性ヘルペスウイルス(HSV)1型と2型による。初感染すると1週間後に粟粒〜米粒大の小水疱、びらんができ、後で黒くなる。男性では亀頭、包皮、冠状溝に、女性では陰唇、腟口にできる。疼痛が強く、排尿困難を伴う。神経節に潜伏感染し、活性化して再発しやすい。

【診断】確定診断は、水疱内容で標本を作って染色あるいは核酸増幅検査。多くの場合、見た目で診断できる。

【治療】バルトレックス®錠(500mg)を1回1錠、1日2回、5日程度。初回発症の場合は10日間。重症例ではアシクロビルの注射。エイズ発症者では1ケ月以上治らなかったり、どんどん広がったりする。

【概要】診断の目的で、生体の組織をひとかけらほど取り出して検査をすること。顕微鏡検査、微生物検査、遺伝子検査などを行う。エイズでは特異的な炎症(サイトメガロウイルス、結核、非結核性抗酸菌など)や、悪性腫瘍(悪性リンパ腫、カポジ肉腫)を診断するために、生検が必要になる場合がある。

【概要】精巣で作られる。減数分裂により体細胞よりも染色体の数が半分になっている。遺伝子とそれを包む膜、そしてエネルギーに富む細胞質、しっぽには強い泳ぐ力が出る。精子を浮かばせている液体を精漿(せいしょう)といい、併せた全体が精液。卵子に突入する時はしっぽや細胞質は置いてきて、核だけ入る。HIV感染者の精子数は減少している。ホルモン、薬剤、HIV感染そのものの影響が考えられている。

【概要】自分の性をどのように認識しているか、またどのような性をアイデンティティとして持っているかを表す用語で「こころの性」とも呼ばれる。多くの人は生物学的な性(からだの性)と性自認が一致している。しかし、これらの性が一致しない場合をトランスジェンダーという。『性別違和』の項を参照。

【概要】精液中の精子量が少ない不妊症の治療として開発された技術。精液をパーコールなどの比重液を加えて遠心分離して濃縮し、精子洗浄培養液で洗浄する。HIV感染者の精液を精子洗浄することにより、感染性のHIVを極限までに低下させることが試みられている。処理過程を一定にして品質の保たれた濃縮液を得ること、そして最終の精子濃縮液中のウイルス量を正確に定量できる技術が必要。処理そのものは生殖補助医療として成立しているが、後者のウイルス定量技術は有料にできないので、研究費を使って実施している。操作そのもので最終的に得られる精子の絶対数は減るので、妊娠の確率は減る可能性がある。また最近はU=Uの概念から、自然妊娠も選択肢の一つである。

【概要】不妊症に対応する生殖医療の技術。排卵を誘発、卵子を取り出す、精液を採取・処理・保存、人工授精(体外受精、顕微授精、卵細胞質内精子注入)、胚の凍結保存、胚移植などを含む。HIV感染の夫婦での挙児希望に応える努力が行われている。片方が感染者、夫婦ともに感染者でとりうる手段が異なる。相手への感染、そして児への感染リスクを可能な限り低減することが求められる。夫が感染者の場合は、精子洗浄法が選択肢となる。一方、強力な抗HIV療法を行えば、血液はもちろん、精液中のウイルス量も検出されなくなるので、生殖補助技術を使わなくても、配偶者にHIV感染は発生しないという意見もある。

【概要】性行為の対象として、同性に向くか異性に向くかという分類。性的指向は「先天的なもの」と「環境による」という両方の説がある。少なくとも意図的に選んだ「志向」や「嗜好」ではない。

【概要】生物学的な性(からだの性)と性自認(こころの性)が不一致であるために違和感が生じること。現在は、「性別違和」に名称が変更となっている。2003年7月に「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」が公布となった。これを契機に、性同一性障害と診断され、性別適合手術を受けているなどの要件を満たせば、戸籍上の性別を変更できるようになった。なお、欧州では、性別適合手術を受けなくても法的な性別の改訂を認めている国も存在する。

【概要】生物学的な性(からだの性)と性自認(こころの性)が不一致であるために違和感が生じること。以前は、精神疾患診断名に性同一性障害と記載されていた。しかし、米国精神医学会は2013年の精神障害の診断と統計マニュアル改定の際に、「性別違和」という名称に変更した。なお、WHOは2019年の改訂の際、「性別違和」を「性別不合(gender incongruence)」と診断名を変更し、精神疾患の枠組みから除外し、「性の健康に関する状態(conditions related to sexual health)」という項目に変更している。

【概要】性感染症やHIVに感染するリスクを下げるように配慮した性行為のこと。性行為では、ペニス、腟という性器と、口(舌)粘膜、肛門・直腸粘膜、手指などの身体部分、さらに性器具(ディルド)などが接触する身体部分は健康な皮膚を除いてHIVの侵入門戸になる可能性がある。一方、唾液には感染性のHIVが含まれることはないが、HIVを含む精液、腟液、血液がそれぞれに接触または侵入する時に感染する確率がある。感染しやすい性行為をしないことや、病原体を除去または感染経路を遮断する方法などがとられる。具体的な方法は個人・行為で異なるが、代表的なものにコンドームの使用がある。

【概要】原虫である赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)の感染により、アメーバ性大腸炎やアメーバ性肝膿瘍などの「赤痢アメーバ症」をきたす。多くは大腸炎で、下痢、テムネス(しぶり腹)、腹痛などの赤痢様症状を認める。壊死性潰瘍性大腸炎をきたし、原虫が腸間膜を傷害し組織に侵入し、血行性に肝・肺・脳などに移行し、アンチョビペースト状の膿汁を含んだ膿瘍を形成する。感染は嚢子に汚染された飲食物の経口摂取により成立するが、糞口感染もあり、男性同性愛者間の性行為により感染が成立することもある。感染者の多くは衛生環境の悪い発展途上国に集中して分布しており、生物や生水の摂食によって感染する。一方、先進国では一般の人々の間には流行しておらず、発展途上国からの帰国者や、男性同性愛者の間で流行する性感染症としてみられる。HIV感染症や梅毒との重(複)感染も多い。わが国では5類感染症(全数把握)に指定されている為、赤痢アメーバ症を診断した医師は、7日以内に管轄の保健所に届け出なくてはならない。第一治療薬はメトロニタゾールである。詳しくは『アメーバ性肝膿瘍』、『アメーバ性大腸炎』を参照。

【概要】性的マイノリティ、性的少数者とも呼ばれる。(用語の詳細は「LGBTQ」の項を参照)2011年頃からSOGI(用語の詳細は、SOGIの項を参照)という概念も用いられている。

【概要】体の性別、戸籍や役割など社会的な性別、性的指向、性自認、性に関する意識や行動を総称する言葉。1995年世界女性会議ではsexual rightsという概念で性に関わる自己決定権を認めるものであった。

【概要】(1)生物学的な意味での性、つまり染色体・遺伝子で規定されたオスとメス。社会では生物学的な違いと関係なくさまざまな男女の区分がつくられている。これはセックスと区別してジェンダーと呼び、日本語には適切な訳語がない。(2)性行為。性行為に関する欲求や考え方のことをセクシュアリティ(sexuality)という。たとえば、誰と、いつ、どのように行うか、生殖を目的とするかなど。

【概要】セックスワークで収入を得ている人。女性だけとは限らない。UNAIDSの用語集では、性的サービスの販売者をセックスワーカーといいかえて使用することとしている。売春防止法では腟とペニスの性交(ホンバン)のみを性交と定義し、女性が不特定多数を相手に金品を対価に性行為をすることを非合法としている。女性セックスワーカー(SW)の顧客は主にヘテロ男性。通称ニューハーフは男性から女性へのトランスジェンダーで、顧客は主にヘテロ男性。通称おなべは女性から男性へのトランスジェンダーで、顧客は主に女性。通称売り専ボーイは男性SWで、顧客は主に男性。通称ホストは男性SWで、顧客は主に女性。業務場所も、ホテル・個人宅(デリヘル)、ファッションヘルス・キャバレー店舗内座席、個室付き浴場、SMクラブ、ストリップ劇場など。

【概要】HIVの急性感染では局所の樹状細胞で増殖したHIVがリンパ節に流れ込み、リンパ節内でウイルスの爆発的な増殖が起こり、全身にばらまかれる。この時期にみられる発熱などの全身症状は感染細胞ごとHIVを排除しようとする反応で、急性感染症状という。この時HIV RNA量は10の6乗コピー/mL以上に達するが、残存している免疫能によって数ヶ月以内に抑制される。この時の定常状態をセットポイントと呼んでいる。セットポイントは患者毎に異なり、高めでセットされた患者は、その後の病気進行が速く、低値にセットされた患者は進行が遅いことが示された。

【略号】3TC(B型慢性肝炎治療薬)

【概要】B型慢性肝炎治療薬。抗ウイルス薬『ラミブジン』の商品名。詳細は、『ラミブジン(B型慢性肝炎治療薬)』を参照。

【略号】d4T

【概要】抗HIV薬。『スタブジン』の商品名。詳細は、『スタブジン』を参照。

【概要】ヒトパピローマ(乳頭腫)ウイルス(HPV)による性感染症。潜伏期間:2〜3ケ月。皮膚、粘膜にいぼ状の腫瘤が多発。男性では亀頭、冠状溝、包皮、肛門などに、女性では陰唇、腟口、会陰部にできる。一見、癌のように見えるが悪性化はない。

【診断と治療】肉眼所見で診断。治療は小さい病変はイミキモド(商品名:ベセルナクリーム5%)。液体窒素による凍結、大きい例では電気メスで焼灼、肛門管にあると入院して麻酔下に手術。

【概要】血友病などの治療にかかる医療保険等の自己負担分を治療研究事業として公費負担する仕組み。特定疾病療養受給者証によって月額1万円となった自己負担金をさらに負担するとしたもの。受給者証はその資格証で毎年更新される。20歳を超えた凝固因子欠乏症の患者が対象であり、実施主体は都道府県である。この制度は血友病の場合、特定疾病療養受給者証(申請は保険組合)と共に使用する。

【概要】病原体が感染して、体内で増え、外に症状が現れるまでの期間を言う。症状は体が反応して排除しようとする時のもの。つまりウイルス感染症での発熱、発疹、リンパ節の腫れなどの症状が似通っている。HIV感染症では初感染からエイズ発病までの期間を言うことが多い。感染した人の50%がエイズ発病するまでの期間は、およそ8年から10年。感染時期が推定できる患者のデータでは、感染時の年齢が若いほど潜伏期間は長く、高齢であるほど短い。