中四国エイズセンター
HIV/AIDS(エイズ)のこと

エイズ関連用語集 ver.9

肉腫 Sarcoma

【概要】悪性腫瘍のうちを除いたもの。肉腫は上皮におおわれた臓器の細胞由来である。すなわち脂肪組織、筋肉、血管、骨、神経などから起こるもの。悪性の程度は様々である。エイズでみられる肉腫はカポジ肉腫がある。

二次予防 Secondary prophylaxis

【概要】再発予防治療。つまり、一度かかってしまった病気の治療に成功したあと、治療をやめてしまうと再発する可能性が高い病気の場合、治療を継続すること。二次予防が推奨されているエイズ日和見感染症は、ニューモシスチス肺炎MAC感染症、トキソプラズマ脳症サイトメガロウイルス感染症、クリプトコッカス症ヒストプラズマ症コクシジオイデス症サルモネラ感染症である。この他再発性の性器ヘルペス症、カンジダ症でも予防治療が行われることがある。このうち二次予防を中止できることが証明されたものは、サイトメガロウイルス感染症とニューモシスチス肺炎である。つまりCD4細胞数が前者で100-150/μL以上、後者では200/μL以上を3ヶ月以上継続したもので、HIV RNAを十分抑制しており、活動病変がないことが条件となっている。

日常生活動作 ADL: Activity of daily life

【概要】日常生活をする時に、身の回りの世話を自分でどれだけできるか、社会生活ができるかを評価すること。認知機能が低下した人、身体機能に障害がある人の自立的な生活を考え、支援策を考える上で重要である。ADLが自立していることは介護の必要度は軽い。

乳酸アシドーシス Lactic acidosis

【概要】体内に乳酸がたまり酸性になって命が危険になる状態。乳酸の濃度が18mg/dLを超えて増加し、血液のpHが酸性であれば乳酸アシドーシスという。ミトコンドリア障害では急性脂肪肝を伴う高度の肝臓腫大が起こり死亡率は高い。危険因子として、女性、肥満、HCV/HBV感染、そして長期間の薬剤使用などがあげられている。核酸系逆転写酵素阻害薬の中ではd4TddIddCと“d薬”が多いと言われ、最近は使わなくなった。そのため報告例も激減している。初発症状は多様。嘔吐など胃腸症状のうえに肝酵素の上昇がみられ、呼吸困難、筋力低下、意識障害がある。集中治療が必要。服薬中止で回復する例もある。治療薬としてカルニチン、ユビキノン、ビタミンB2、ビタミンB6などが提案されているが確立していない。重炭酸ナトリウムの輸液、透析など対症療法が中心となる。

ニューモシスチス肺炎 Pneumocystis jiroveci pneumonia; Pneumocystosis

【概要】エイズ指標疾患で最も多い。従来、ニューモシスチス・カリニと呼ばれていた。カリニは「犬の」という意味。ヒト型をチェコの寄生虫学者の名前にちなんで「イロベジー」に命名し直された。このため、現在は「カリニ肺炎」ではなく、「ニューモシスチス肺炎」あるいはPC肺炎と呼ぶことになった。略号はPCPのままである。ニューモシスチスはほとんどの人が生後すぐに感染して肺に持っている。免疫力の抑えが足りなくなると、活性化して肺炎を起こす。エイズ指標疾患のうち最も多い日和見感染症

【診断】発症早期の症状は空咳だけのこともある。HIV感染者で痰の出ない咳、発熱などの典型的な症状があり、胸写で間質性肺炎、検査でCD4細胞数が200/μL未満、低酸素血症、LDH上昇、KL-6高値、β-Dグルカン高値があればニューモシスチス肺炎を強く疑う。確定診断は誘発採痰法で得た液をPCR法で検査。あるいは肺胞洗浄液か肺生検で細胞や組織をディフクィック染色、あるいはグロコット染色を行い、ニューモシスチス・イロベジーを確認すること。しかし、菌体を見つけられなくても、次の1)〜4)すべてが該当すれば診断してもよい。1)最近3か月以内に a)運動時の呼吸困難、または、b)乾性咳嗽。 2)a)胸部X線でびまん性の両側間質像増強、または、b)ガリウムスキャンでびまん性の両側の肺病変。3)a)動脈血ガス分析で酸素分圧が70mmHg以下、または、b)呼吸拡散能が80%以下に低下、または、c)肺胞-動脈血の酸素分圧較差の増大。4) 細菌性肺炎を認めない。

【治療】(1) ST合剤:内服、(2)ST合剤の注射、治療期間は14〜21日。(3) アトバコン(サムチレール)21日間。(4) ペンタミジン:点滴静注、14〜21日間。動脈血の酸素濃度が70mmHg以下であれば、プレドニソロンを併用してよい。抗HIV薬の開始で免疫再構築症候群を起こしやすい。で二次予防をする。補助酸素療法をしないと生存率は15〜20%に下がる。

【予防】免疫能が低下すると高率に発生するので、CD4細胞数が200/μL以下になるとST合剤の内服(毎日or週3日)や、アトバコンなどで一次予防を行う。CD4細胞数が200/μL以上を3ヶ月以上維持できれば、予防治療は中止できる。また二次予防は、ST合剤またはアトバコン連日内服、ペンタミジン(300mg/回/月)の吸入、月に1回などを行う。

認知症 Cognitive disorders: Dementia

【概要】脳の器質的変化によって生じた認知機能障害の総称。先天性のものでないこと、一時的な“せん妄”でないこと、統合失調症やうつ病でないことが必要。HIV感染症も認知症を発生する原因となる。昔は「痴呆」と呼んでいたが現在は使われない。認知症の症状は、中核症状と周辺症状に分けられる。中核症状とは認知症の患者に必ずみられる症状で、記憶障害と認知機能障害(失語・失認・失行・実行機能障害)から成る。周辺症状とは、幻覚・妄想、徘徊、異常な食行動、睡眠障害、抑うつ、不安・焦燥、暴言・暴力、性的羞恥心の低下、時間感覚の失調などで、病型や患者によってない場合もある。「うつ病」や「せん妄」を鑑別しないといけない。外見上は正常にみえる状態から、重度の知能障害に至るまで連続的な過程である。

認知障害 Cognitive dysfunction

【概要】一過性の「せん妄」との区別が必要。慢性的な知的能力の障害。脳が破壊されている場合と、毒性物質による一時的な機能障害があるが、通常は神経細胞の脱落を伴う前者が多い。認知機能とは、記憶、思考、理解、計算、学習、言語、判断などの知的な能力を指す。これら認知機能の障害のこと。生活・社会活動全般に支障をきたす。知覚機能、記憶機能、注意機能、実行機能などの認知機能障害は、生活機能レベルに大きく影響を与える。エイズではかつてHIV脳症と呼ばれたHIV関連神経認知障害トキソプラズマ脳症進行性多巣性白質脳症(PML)の結果、認知障害になることがある。認知機能検査(スクリーニング法)には、HDS-R(改訂長谷川式認知症スケール)、Mini-Cog、MoCA(Montreal Cognitive Assessment)、DASC-21(地域包括ケアシステムにおける認知症アセスメントシート)、MMSE(ミニメンタルステート検査)、ABC-DS(ABC認知症スケール)などがある。検査の目的、検査の所要時間、実施者の職種など、施設の状況に応じて検査を選択する。

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