中四国エイズセンター
HIV/AIDS(エイズ)のこと

エイズ関連用語集 ver.9

メジャー変異 Major mutation

【概要】プロテアーゼ阻害薬を使用して最初に発現する変異で、使用された薬剤に特異的なものが多い。酵素の構造が変わり薬剤と酵素の結合が起こりにくくなるためにウイルス増殖の抑制ができなくなる。プロテアーゼの30,48,50,82,84,90番目のアミノ酸に変異が起こったものを主要変異と言う。90番以外はすべてプロテアーゼの構造で活性中心の変異である。1カ所の変異だけで全く効かなくなるわけではない。

メタドン

【概要】ヘロインの誘導体の商品名。経口でヘロインと似た作用を持ち、半減期が長い。製造から販売までを政府がコントロールできる。日本にはない。

メタドン・クリニック Methadone Clinic

【概要】ヘロイン中毒の患者に同等な作用で内服できるメタドンを代用として使用する診療所。患者は不法で高価なヘロインの代わりにメタドンを無料で配布される点がメリットになる。ある意味では合法的な麻薬患者を政府にコントロールされた診療所で使用されることで、患者の管理につながる。同時にHIV予防教育や検査の奨励が行われており、患者・感染者発見の端緒にもなる。

メタンフェタミン

【商品名】ヒロポン

【概要】吸入や内服で摂取できるものがある。やがて“あぶり”と呼ばれる蒸気の吸入では足りなくなり、静注使用に移行してゆく。強烈な覚醒効果と快感をもたらすので、セックスドラッグとして使用されている。強い精神依存が形成され、被害妄想、迫害妄想、幻聴、体感幻覚などの精神病性障害を起こし、断薬後もしばしば慢性化する。注射の“回し打ち”によるウイルス感染が多い。

【その他】ICE、“シャブ”、“スピード”、“S”などとも呼ばれる。

メトロニダゾール

【商品名及び略号】ロゼックス®ゲルアネメトロ®点滴静注液フラジール®内服錠、フラジール®膣錠 MNZ

【概要】抗原虫薬。赤痢アメーバ症、トリコモナス症、ランブル鞭毛虫症、糞線虫症、嫌気性菌、感染性腸炎、ヘリコバクターピロリ感染症に使用される。

【副作用】けいれん、脳症、膵炎、出血性腸炎、疼痛、嘔吐、肝障害、白血球減少など。

免疫 Immunity

【概要】「自分」と「自分以外」を識別して、「自分以外」を排除する生体が持っている防御システム。「自分以外」はしばしば細菌ウイルスなどの侵入者であり、免疫によって病気を防いでいる。血液の白血球が主に担当し、その中でもマクロファージ好中球リンパ球が重要な働きをする。マクロファージが最初の処理に当たって信号を出し、リンパ球が覚えて侵入者である病原体を破壊する。また、好中球は病原体を取り囲んでやっつける。抗体という蛋白を使う場合を液性免疫、細胞同士の連携プレイでやる場合を細胞性免疫という。

免疫学的測定法 Immunoassay, Immunometry

【概要】臨床検査の原理で抗原抗体の特異的な結合反応を利用した測定法。反応層の中で結合物をつくらせ、結合物の信号を測定する方法。反応原理として次のものがある。改良されて感度特異度が高く自動化機器で大量測定できるようになった。(1)放射免疫測定法(RIA: Radio Immuo Assay):最も古い。放射能を扱う規制があった。(2)酵素免疫測定法(EIA: Enzyme Immuno Assay):ペルオキシダーゼのような酵素を抗体にくっつけて、後から基質を加えて比色を行う。(3)酵素結合免疫吸着法(ELISA: Enzyme-linked Immuno-sorbent Assay):固相にくっつけた抗体と酵素をつけた2種類の抗体で抗原を挟む方法。(4)化学発光酵素免疫測定法 (CLEIA: Chemiluminescent Enzyme Immuno Assay):反応物から発生する化学発光を測定する。(5)化学発光免疫測定法(CLIA:Chemiluminescent Immuno Assay):モノクローナル抗体をコーティングした磁性体と蛍光色素をつけた固相化抗体ではさみ、蛍光量を測定する。(6)免疫クロマトグラフィー法(IC:Immuno-chromatography):抗原抗体反応物が色素で浮き上がって目で見えるように工夫された迅速法。

免疫機能障害 Immune dysfunction

【概要】身体障害福祉法に規定された障害名のひとつ。正式名称は、「ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害」である。HIV感染症であると認められれば、身体障害の程度に応じて、1級〜4級の身体障害者手帳が交付される。1998年4月に新たに認定された。

免疫グロブリン Immunoglobulins

【概要】免疫グロブリンは物質群の名前で、抗体はその働き。同じと考えてよい。免疫グロブリンには抗原と結合するFabという部分があり、この細かな構造が抗原の構造にぴったり結合する形になっている。免疫グロブリンは化学構造で分類するとIgG、IgA、IgM、IgD、IgEがあり、それぞれ役割が違う。

免疫クロマトグラフィー法 Immunochromatography method; IC method

【概要】略号は「IC法」。ベッドサイドや診療所レベルで実施できる簡易検査法。簡単な前処理で試薬窓に検体を滴下し、一定時間経過をすると判定窓に、結果が(+)と出たり、色が着いたバンドが示される。HIVでは、富士レビオ社の「エスプラインHIV Ag/Ab」とアーリア・メディカル社の「ダイナスクリーン・HIV-1/2 combo」が第4世代ある。スクリーニング検査なので、陽性の場合は確認検査が必要である。採血後数時間あるいは数日待つ必要がない。保健所や医療機関での針刺し事故後などの緊急検査で採用されている。

免疫再構築症候群 IRIS: Immune reconstitution inflammatory syndrome

【概要】進行したエイズの免疫不全症が、強力な抗HIV薬併用療法によって回復してきた後、残存している病原体に対し思い出したように免疫反応が起こり、一時的に症状が強くなること。ニューモシスチス肺炎サイトメガロウイルス感染症、結核非結核性抗酸菌症トキソプラズマ脳症クリプトコッカス症進行性多巣性白質脳症などで経験される。感染症を起こす病原体が、免疫回復過程に居残っているということが発症の 条件である。発症時期は抗HIV治療開始から数日から100日と広く分布する。また抗HIV治療開始時のCD4細胞数は50/μL以下に例に多い。抗HIV療法を継続すると共に、過剰なサイトカイン産生を抑制するために、対症的に中等量の副腎皮質ステロイドの併用を行う。

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