中四国エイズセンター
HIV/AIDS(エイズ)のこと

エイズ関連用語集 ver.9

報告義務 Reporting system to the government

【概要】感染症予防法の第12条で、全数把握対象の感染症を診断した医師に対して、都道府県知事等への届出が規定されている。HIV感染症/エイズについては第5類に分類され、7日以内に全数届けなればならない。既に報告済みの患者が発病・死亡したなどの病状変化の報告は義務ではない。発生届けに記入される項目は、患者の状態、性別、診断時の年齢、病名、診断方法(指標疾患)、診断時の症状、発病年月日、初診年月日、診断年月日、感染推定年月日、死亡年月日、AIDS指標疾患、推定感染地域、国籍、感染原因、感染経路などであり、個人を特定するものはない。また梅毒合併の有無も最近追加された。

保健所 Public Health Office

【概要】保健所は地域保健法1994(平成6)年により規定された、疾病の予防、健康増進、環境衛生などをする公衆衛生活動を行う公的機関である。主な業務は(1)健康診断、(2)母子衛生、(3)歯科衛生、(4)栄養改善、(5)衛生教育、(6)環境衛生と食品衛生、(7)試験検査などである。エイズでは地域保健の一環として、HIVの無料・匿名検査や、エイズ相談の他に、地域や学校への出前教育にとりくんでいる所もある。難病・長期療養者の療養指導という意味で在宅エイズ患者の支援や訪問を行い、医療機関、訪問看護ステーションと連携を始めた保健センターもある。

母子感染 Maternal transmission, Mother to child infection

【概念】HIV感染した母体から胎児・新生児への感染。

【頻度】母が無治療のHIV感染者の場合、児に感染する率はヨーロッパで15%、ニューヨークのある地域で25%、アフリカでは50%という地域もあり、平均は30%前後と思われる。母体 のHIV RNA量が多いほど感染率が高い。厚労省研究班の平成22年度調査では経腟分娩で20.7%、緊急帝王切開で5.6%、選択的帝王切開で0.5%であった。

【経路】(1)子宮内あるいは胎盤感染、(2)産道または周産期感染、(3)母乳感染のどれもある。陣痛が起こる頃になると、胎盤の一部が剥がれて、お互いの血液が混じり合う。破水後から娩出に至る時間が長いと感染率が高い。感染率は母体の血漿HIV RNA値に比例しており、1000コピー/mL以下では感染例は稀で、10万コピー/mLでは40%に及ぶ。これらの成績から(2)が大半なのではないかと考えられている。

【診断】出生直後、2週、4週、24週に血漿HIV RNA検査する。測定できれば新生児のプロウイルスDNA(PCR)を調べるのが最も確実。直後にPCRが陽性のものは、子宮内感染が疑われる。直後にRNA陰性で、その後陽性に変わったものは周産期感染と考えられる。24週までRNA陰性のものは、感染を免れたものと診断される。母親からの移行抗体であるHIV抗体は通常消失に15ヶ月を要するので、18ヶ月以後に複数回陽性の場合は感染と考えられる。なお出生前診断は流産の危険性があるうえに感染を発生させる危険がある。

【予防】母子感染を予防する方法は次のものが考えられる。(1)妊婦のHIV検査。(2)妊娠中に抗HIV薬で母体のHIV RNA量を減らす。(3)予定帝王切開によって娩出時間を短くし、産道粘液や母体血への曝露を減らす。(4)新生児への抗HIV薬の使用。(5)母乳の禁止。なかでも、出産前にARTで母体のHIV RNA量を減らすのが最も有効な手段であり、日本のART実施例の約200例からは新生児の感染例は出ていない。また欧米では抗HIV療法を中心とし、帝王切開は行わない方向にある。

ホスアンプレナビルカルシウム水和物

【商品名及び略号】レクシヴァ®錠 FPV

【用法・用量】抗HIV薬の治療経験がない患者:ホスアンプレナビルカルシウム水和物として1回700mgとリトナビル1回100mgをそれぞれ1日2回併用投与またはホスアンプレナビルカルシウム水和物として1回1400mgとリトナビル1回100mg又は200mgをそれぞれ1日1回併用投与またはホスアンプレナビルカルシウム水和物として1回1400mgを1日2回投与。HIVプロテアーゼ阻害薬の投与経験がある患者:ホスアンプレナビルカルシウム水和物として1回700mgとリトナビル1回100mgをそれぞれ1日2回併用投与。

【概要】抗HIV薬プロテアーゼ阻害薬

【副作用】発疹、嘔気、下痢など

ホスピス Hospice

【概要】治癒(キュア)よりも、ケアに重点を置いた医療。緩和ケア病棟は治癒を目指した治療の継続が困難、または治癒を目的とした治療を拒否した場合に、その後の身体的・精神的苦痛に対する緩和・ケアを積極的に行う施設。末期疾患などで、限られた人生をできるだけ快適に過ごさせることを目的にしたターミナルケア(終末期医療)を実現することを目標としている。現在もエイズの中には治せない病気もあり、治療抵抗性になった「」やエイズ脳症進行性多巣性白質脳症(PML)などでは「キュア」から「ケア」に重心を移す緩和ケアへの移行も考慮される。しかし、エイズを担当している全国の拠点病院は、基本的に「急性期病院」であり、ホスピス・ケアまでの提供が難しい施設もある。

ボディマスインデックス BMI: body mass index

【概要】体型指数。身体計測による栄養指標の1つ。カウプによって考案されたBMI=体重(kg)÷〔身長(m)×身長(m)〕の式を用いるのが一般的。19以下はやせ、25以上を肥満。罹病率が最少である22を標準とする。ちなみにアメリカでは25以上は「Overweight」で30以上が肥満としている。

ホモセクシャル Homosexual

【概要】同性を恋愛対象とみる男性。男性同性愛とも呼ぶ。女性同性愛者はレズビアンと呼ばれる。ゲイ(gay)は当事者が自らを表現する用語として発信した用語であり、肯定的な呼称になる。性愛は一般に「同性愛」、「両性愛」、「異性愛」と三分割されるが、身体的性別や性自認(自分がどのような性別と感じているか)と性的指向にはグラデーションがあるため、性愛は多様性があると考えられるようになってきた。しかし大多数が異性愛者と呼ばれる範疇に属するといわれているため、異性愛者以外は「性的マイノリティー(少数派)」といわれ、現在も偏見や差別の対象となることがある。性的指向は自ら選択して決まるものではなく、恋愛対象としてどちらの性(もしくは両方)に惹かれるかという状態をさす。同性愛者の多くは異性愛者中心の社会で自分の性愛に悩んだり、いじめ体験が多いという報告もある。特に思春期においてはセクシャルアイデンティティー(性の自認)や自己肯定感の獲得に大きな影響があり、「安全でない性行為」との相関も注目されている。

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