中四国エイズセンター
HIV/AIDS(エイズ)のこと

エイズ関連用語集 ver.9

併用療法 Combination therapy

【概要】微生物や腫瘍に対する効果がある薬を組み合わせて使うこと。反対語は単剤療法。複数の薬を使うことにより、相加的な効果、相乗的な効果を期待する。単剤よりも薬の量を減らせれば副作用が減る可能性がある。必ず交差耐性がない薬剤を選ぶ。抗HIV薬の場合は、別名「HAART」「ART」と呼ばれる。逆転写酵素阻害薬では核酸系(NRTI)非核酸系(NNRTI)の併用、NRTIとプロテアーゼ阻害薬(PI)の併用、NRTIとPIあるいはインテグラーゼ阻害薬(INSTI)の組み合わせで有用なレジメンが確立された。

ベクター Vector

【概要】細胞の外から特定の遺伝子DNAを宿主細胞の中に運びこむ運び屋。プラスミド、ファージ、無害化したウイルスなどが利用される。遺伝子導入技術は、遺伝子の働きを調べる基礎研究から、遺伝子組み換え型ワクチン、遺伝子治療に欠かすことができない。レトロウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルスがベクターとしてよく用いられるが、ヒトが中和抗体を持っていたら感染が成立しないので、事前に調べておく必要がある。メルク社が治験を行ったHIVワクチンにはアデノウイルスがベクターとして使用された。

ヘテロセクシャル Heterosexual

【概要】もっぱら異性を恋愛対象(性的な対象)とすること。別名、異性愛者。その他、ストレートやノンケとも呼ばれる。アフリカでは異性間性交渉によるHIV感染が大多数である。欧米でも同性間の割合は依然高いが、異性間の割合は年々増えつつある。日本の状況はその中間にあたると言われている。

ベネシッド®錠

【概要】梅毒の治療にペニシリン内服と共に使用する。プロベネシドの商品名。詳細は『プロベネシド』を参照。

ヘルパーT細胞 Helper T cell

【概要】マクロファージから得た情報をもとに免疫全体を指揮する(=県警本部)役目のTリンパ球HIVが特に好んで感染する細胞で、HIV感染症では数が減少する。この細胞の表面にはCD4という抗原があり、検査ではこれを数える(=CD4細胞数)。5才以上の非感染者では600/μL以上であるがHIVに感染すると500/μL以下にまで減少し、さらに、エイズ発症時には200/μL以下にまで減少する。新生児・乳幼児の正常値はさらに高い。

【詳しく】HIV感染症で免疫能を評価する最も良い指標。本当は数よりも働きが大切であろうが数の測定が最も安定している。治療開始、治療評価などに使う。

ヘルペス Herpes

【概要】ヘルペス属というDNAウイルスの仲間によって起こる皮膚粘膜に水疱を作る病気。口唇ヘルペス(単純ヘルペス1型)と性器ヘルペス(単純ヘルペス2型)と、帯状ヘルペス(=帯状疱疹ともいう。水痘・帯状疱疹ウイルス)の3種類あり、単に“ヘルペス”と呼んでいる場合には、どれを指しているか分からない場合がある。子供の時にほとんどの人が感染不顕性感染となる。治ったようにみえても、神経の細胞の中に潜んでいる。この状態を潜伏感染ともいう。

ヘルペスウイルス

Herpesviruses HHV-1:単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)。口唇ヘルペスの病原体。HHV-2:単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)。性器ヘルペスの病原体。
HHV-3:水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)。水痘帯状疱疹の病原体。
HHV-4:Epstein-Barrウイルス(EBV)。伝染性単核球症の病原体。
HHV-5:サイトメガロウイルス(CMV)。サイトメガロウイルス感染症の病原体。 HHV-6:突発性発疹の病原体。
HHV-7:突発性発疹の病原体。HHV-6より発生は少ない。
HHV-8:同性愛の男性で感染している割合が高く、男性間の性行為で感染し、HIV感染者でのカポジ肉腫の発生に関与していると考えられている。

ベルリンの患者 Berlin patient

【概要】ベルリンに住むアメリカ人のTimothy Ray Brownのこと。HIV感染者で急性骨髄性白血病になったため、2007年にHLA適合かつ共受容体CCR5の分子異常の提供供者から骨髄移植をうけた。その後、抗HIV療法を中止したがHIVはどこからも見つからない状態が続いている。世界で最初にHIVが完治した人物と考えられている。

変異 Mutation, mutant

【概要】生物の進化や適応の仕組みのひとつ。本来、遺伝子の情報はDNAからDNAへ、あるいはRNAからRNAへとコピーされることで受け継がれるところが、このコピーの過程でミスが起こり、違った塩基に入れ替わったり、一つ挿入されたり、一つ抜け落ちたり、グループで抜け落ちたり、入れ替わったりすると、遺伝子コードの並びが変わり、別の信号に置き変えられてしまうことを変異という。変異の結果、新しい性質を持った生物を変異体(mutant)という。変異体が一つの群を形成するとストレインと呼ばれる。HIVの場合は逆転写酵素がコピーミスを起こしやすい。結果として変種のウイルスが体内で増えることになる。変異ウイルスは形質(表現型)が変化して、ワクチン耐性であったり、標的細胞への毒性が変化したり、薬剤耐性であったりする。

ペンタミジン

【商品名】ベナンバックス®注用

【用法・用量】1日1回4mg/kgを投与。

【概要】ニューモシスチス肺炎治療薬。予防や軽症には吸入で使用することもある。

【副作用】血圧低下、低血糖、不整脈、発熱、吐き気、嘔吐、発疹、腎障害、膵炎、貧血、白血球減少、血小板減少など。

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