CAB Cabotegravir
抗HIV薬。インテグラーゼ阻害薬『カボテグラビル』。商品名はApretude(注射薬)、Vocabria(経口薬)。詳細は、『カボテグラビル』を参照。
抗HIV薬。インテグラーゼ阻害薬『カボテグラビル』。商品名はApretude(注射薬)、Vocabria(経口薬)。詳細は、『カボテグラビル』を参照。
【略号】CAB/RPV
【概要】抗HIV薬。インテグラーゼ阻害薬『カボテグラビル』
と非核酸系逆転写酵素阻害薬『リルピビリン塩酸塩』の注射薬の商品名。両成分の内服薬を1か月内服したのち、4週または8週に1回筋肉注射する。日本では2022年1月現在承認されていないが、アメリカやカナダでは承認されている。長期作用型の薬剤として期待されている。
『クレアチニンクリアランス』を参照。
【概要】Cysteine-Cysteine ケモカイン・レセプター5の略。樹状細胞やマクロファージの細胞表面にある蛋白の一つでケモカイン受容体。本来の役割は、MIP-1α、MIP-1β、RANTESというケモカインに結合し活性化することによって、炎症の場に細胞が移動し、刺激に対して免疫反応を起こす。HIVが樹状細胞やマクロファージに感染するときには、HIVのgp120という蛋白とCD4が結合し、さらにHIVのgp41とCCR5が結合することにより、ドアが開くようにウイルスの膜と細胞の膜が融合して侵入門戸となる。CD4,CCR5どちらかが欠けていれば、HIVは細胞内に侵入できない。CCR5の分子異常(Δ32部分欠損)があると、HIVが細胞内に入れない、あるいはHIVには感染するが進行が緩やかである。CCR5阻害薬(侵入阻害薬)であるマラビロクはCCR5に接着することにより、CCR5に指向性をもつHIVの侵入を阻止する抗HIV薬である。
【概要】別名CCR5拮抗薬。抗HIV薬の作用メカニズムとしては侵入阻害薬に分類される。HIVがマクロファージや活性化T細胞に吸着して細胞内に侵入するとき、細胞の表面にあるCCR5またはCXCR4というケモカイン受容体が、CD4と共に受容体になる。HIVがCCR5に指向性(トロピズム)がある場合、CCR5に薬がHIVより先にくっついてしまえば、まるで鍵穴に蓋をしてドアが開かなくなりHIVは侵入できなくなる。現在市販されているのはマラビロクだけ。重要な点はHIVが侵入門戸としてCCR5に向いていること、つまり指向性(トロピズム)をもっていることである。使用する前に指向性検査を実施しなければならない。
【概要】フローサイトメーターという検査機器を使って数える。モノクローナル抗体と結合すると蛍光を発生する装置で、光った細胞の数を数える。CD4数の実数計算は次のように計算する。CD4細胞数(/μL)=白血球数(/μL)×リンパ球の割合(%)×CD4の割合(%)÷10,000。成人の基準値は中央値が900/μL、範囲としては600〜1,400/μLあたりである。小児のCD4細胞数は年齢により違う。12ヶ月未満、5才まで、そして12才までの3段階に分けられて設定されている。百分率で評価するほうが便利な場合もある。CDCのガイドラインによると25%以上は免疫不全なし、15〜24%は中等度の低下、15%未満は重度な免疫不全と判定している。CD4細胞数の測定方法、測定試薬などは標準化されていない。実用的には±30%の変動は誤差範囲と考え、この範囲内の変動にはとらわれすぎないこと。
【概要】米国保健福祉省のもとにある疫学研究機関で、「防疫センター」あるいは「疾病管理予防センター」と訳される。扱っている領域は、先天異常、身体障害、疾病、救急制度、環境、遺伝、健康プロモーション、暴行傷害、旅行者の健康、 ワクチン、職場環境など幅広い。CDCの勧告文書は十分な根拠が明示され、世界共通ルールとみなされるほどの影響力がある。ジョージア州アトランタ市に本部があり総職員数は14,000人という。アメリカ国内外の感染症の研究・管理・予防に力を発揮するばかりか、海外の感染アウトブレイクにも職員がでかけ、調査、指示などをする。エイズやエボラ出血熱の発見も行った。最近ではエボラウイルス、ジカウイルスが有名。機関誌は「Morbidity and Mortality Weekly Report」という週報。
【概要】アメリカCDCが定めたエイズ指標疾患。CDC病期分類では第4ステージ。一度エイズと診断されたら、状態が改善してもエイズとして定義される。エイズ指標疾患に含まれるものは25疾患である。(1)気管支・気管・肺のカンジダ症。(2)食道カンジダ症。(3)侵潤性子宮頸癌。(4)コクシジオイデス症-播種性、肺外。(5)肺外クリプトコッカス症。(6)慢性腸管クリプトスポリジウム症-1ケ月以上。(7)サイトメガロウイルス症-肝臓、脾臓、リンパ節以外。(8)サイトメガロウイルス網膜炎-視力障害を伴う。(9)HIV関連脳症。(10)単純ヘルペス感染症-1ケ月以上の慢性潰瘍、気管支炎、肺臓炎、食道炎。(11)ヒストプラズマ症-播種性、肺外。(12)慢性腸管イソスポラ症-1ケ月以上。(13)カポジ肉腫。(14)バーキット型リンパ腫-または相応するリンパ腫。(15)免疫芽球型悪性リンパ腫。(16)原発性脳リンパ腫。(17)マイコバクテリウム・アヴィウム複合体あるいはMカンサシイ-播種性、肺外。(18)結核-部位を問わず。(19)他の抗酸菌感染症-種類を問わず、播種性あるいは肺外。(20)ニューモシスチス肺炎。(21)反復性肺炎。(22)進行性多巣性白質脳症。(23)再発性サルモネラ症。(24)トキソプラズマ脳症。(25)HIV消耗性症候群。(26)6歳以下の小児の再発性細菌感染症。
【概要】CDCは合衆国の成人HIV感染者は、感染と診断された時点の病期を、0,1,2,3そして不明の5種類に分類している。この分類は疫学的な分類であり、患者のケアなどに用いるものではない。おもに診断時のCD4細胞数によっている。病期0:早期HIV感染。HIV抗体検査が陰性または判定保留で、感染後6ヶ月以内の状態である。病期1:エイズ指標疾患なし。CD4細胞数≧500/μL(または≧29%)。病期2:エイズ指標疾患なし。CD4細胞数は200〜499/μL(または>14〜28%)。病期3(エイズ):CD4細胞数<200/μL(または<14%)。またはCD4細胞数に関係なくエイズ指標疾患があるもの。病期不明:CD4細胞数が不明、またはエイズ指標疾患が不明のもの。
『ピーク値』を参照。
『サイトメガロウイルス』を参照。
【概要】中枢神経系。脳と脊髄は固い骨に囲まれ、さらに髄膜で囲まれた空間に浮いている。空間には脳脊髄液が流れている。中枢神経系は、神経細胞と神経線維、これらを守る神経膠細胞(グリア細胞)からできている。神経細胞に栄養を与える血管には血管脳関門(BBB)という物質選択のバリアがある。HIVは単球によってBBBを越えて中枢神経に侵入することができる。グリア細胞の中で増殖し、HIV由来蛋白が炎症反応の引き金となり、過剰なサイトカインが神経細胞を破綻させる。このようにHIV関連神経疾患(急性感染時の無菌性髄膜炎、HIV関連神経認知障害、脊髄症)を起こす。中枢神経系の日和見感染症では、トキソプラズマ症、クリプトコッカス症、進行性多巣性白質脳症がある。悪性腫瘍では悪性リンパ腫がある。
【概要】HIV関連神経認知障害(HAND)のスクリーニングのために開発された神経心理検査バッテリー(複数の神経心理検査の組み合わせ)。HIV陽性患者における認知機能の低下(HAND)の問題が指摘されていたが、日本では、当初各施設で独自の検査バッテリーを用いて評価を行っていた。統一した基準でHANDの有病率を調査することを目的に、2015年に国立国際医療研究センターエイズ治療・開発センターを中心にHANDの診断に使用できる検査バッテリーとして開発された。記憶力や情報処理能力など7つの認知領域が組み込まれており、検査の所要時間は45〜60分程度。また、再検査も可能となっており、経時的な評価を行うことができる。
【概要】抗HIV薬の血中濃度と脳脊髄液中の濃度の比較から、中枢神経移行・有効性のランキングをスコアとして表現したもの。高いほど移行が良い。併用する場合はそれぞれのスコアを加算する。HIV関連神経認知障害(HIV-associated neurocognitive disorder;HAND)の抑制には中枢神経への移行性が良い抗HIV薬の使用が有効であったという報告や、合計スコアが7以上の場合は6未満のものに比較して、髄液中のHIV検出率が低下するという報告がある。しかし、現在主流のインテグラーゼ阻害薬は概ね中枢神経への移行性が良好で、かつウイルス抑制作用が強いため、最近ではあまり話題にならなくなった。
【参考:ランク】
[スコア4]ジドブジン、ネビラピン、
[スコア3]アバカビル硫酸塩、エムトリシタビン、エファビレンツ、ダルナビルエタノール付加物、ホスアンプレナビルカルシウム水和物/リトナビル、ロピナビル、マラビロク、ラルテグラビルカリウム、
[スコア2]ジダノシン、ラミブジン(抗HIV薬)、スタブジン、エトラビリン、アタザナビル硫酸塩、ホスアンプレナビルカルシウム水和物、
[スコア1]テノホビル、ネルフィナビル
『脳脊髄液』を参照。
【概要】肝臓における薬物を分解する酵素の一つ。3A4が有名で、 この酵素が増えると一般に薬物の代謝・分解が進む。詳細は『チトクロームP450』を参照。
【概要】C型肝炎ウイルス(HCV)が引き起こす肝臓病の総称。国内に200万人、世界で1億人の感染者と推定される。感染経路の大半は輸血、手術、注射などの医療行為、刺青、鍼、覚醒剤など血液を介したもの。母子感染や夫婦間の感染は少ないが、男性同士の性行為感染が注目されている。感染を予防するワクチンはまだ開発されていない。抗体には中和活性はなく、機会があれば何度でも感染する。HCVには大きく分けて6種類の遺伝子型があるが、日本では1bが約70%、2aが約20%、2bが約10%である。急性期も慢性期も症状が軽く、肝硬変や肝癌に至って発見されるか、献血や健康診断、たまたま他の病気がきっかけで行った検査が発端になってみつかることが多い。感染後ほとんどが慢性化し、肝の線維化が徐々に進む。毎年100人の患者から7人の肝臓癌が発生するとされる。日本の肝臓癌の7割の原因である。非加熱製剤時代の血友病患者のほとんどはHCVに感染したが、近年治療薬の進歩により完治可能となった。
【検査】HCV抗体:陽性の場合、現在の感染か既感染。HCVコア抗原、HCV RNAの定量検査:現在の感染。一般に肝炎が進行したものほど、また遺伝子型ではIa、Ib型が、抗原量、 ウイルス量が多い。
【治療】HCVが排除されたら線維化が改善し、癌発生が減少する。治療の目的はHCVを排除し病状進行をくい止めることである。C型肝炎は、ウイルス排除が可能な症例はできる限り早期に治療を開始する。慢性肝炎、代償性肝硬変では経口抗ウイルス剤の併用療法を第一選択とする。治療前に耐性ウイルス検査を実施するのが良い。近年、HCVの生活環のステップを阻止することによりHCVを排除し、完治が期待できるようになった。
【概要】1989年に遺伝子が発見されたC型肝炎の原因ウイルス。HCVの遺伝子はRNAであり、肝臓細胞内で増殖するが核の中の遺伝子に組み込まれない。国内に200万人の感染者、献血人口で約1.2%と言われていたが、最近減少している。若年者では非常に少ないが高齢者では高い。地域差があり、昔の医 療行為による感染が疑われる。
【感染経路】(1)血液感染:ディスポの注射器・注射針が導入される前には医療行為による感染があった。輸血による感染もあったが、現在では検査の導入でほぼ皆無となった。(2)性行為感染:非常に稀と言われている。(3)母子感染:頻度はかなり低い。感染を予防するワクチンはまだ開発されていない。抗体には中和活性はなく、機会があれば何度でも感染する。