HIVの院内感染と対策
広島大学医学部附属病院 輸血部 高田 昇

7.最後に

  • 希望者や了解する者にはHIV抗体検査を実施しても構わない。早期発見は、早期治療によって発症を遅らせ、感染者の人生設計を調整できQOLを高める。さらに本人の努力で感染の拡大を防ぐことができる。HIV検査はもっと推奨されるべきである。
  • 一方、曝露事故発生の面からみると「患者がどういう病原体に感染しているか」ということと、「事故が起こる」こととの間には直接関係がない。事故は起こる理由があって起こるのであり、感染者だから頻繁に起こるのではない。事故が起こった後の対応が便利であるという理由で、患者の無断検査が行われてはならない。
  • 日本ではHBVやHCVが原因で毎年3万人が死亡している。その中の数百名は職業上で感染した医療者であろう。HIVは日本の医療者に新たな危険を与えているが、職業上の感染をどう考えるかは、我々の職業感に結びつくように思われる。

参考文献
1)高田 昇:医療者へのエイズ教育.病態生理 12:950-956, 1993.
2) 稲垣 稔:HIV関連針刺し事故の実態と対策.臨床医
1994;20(3):298〜302. 
3) 厚生省:HIV感染症診療のてびき(改訂) 中央法規出版、1994. 
4) 白幡 聡:院内感染対策. AIDS/HIV感染症の最新ガイド(木村 哲ら編) 南江堂、1994. p148-155. 
5) 河崎則之:消毒薬にはどのうようなものがありますか? エイズの診療Q&A(山田兼雄ら編)医薬ジャーナル社、1994.p119-123. 
6) 矢野邦夫・浦野美恵子:HIV院内感染対策
-HIVに関する職務上および院内感染予防対策- 日本医学館、1997.