厚生省のエイズ科学研究費 平成9年度は10億5000万円 

■ 平成9年度の厚生省の科学研究費補助金(エイズ対策研究事業)は研究課題が公募となり、採択された研究予算の合計は、10億5000万円です。その他の事業つまり厚生省〜自治体ルートやエイズ予防財団、医薬品機構、文部省などの予算についてはデータを入手していません。

■ 特別重点研究は5つの課題で合計10億円、奨励研究は21課題で合計5000万円です。<エイズに関する臨床研究>は、木村 哲教授(東大)の「HIV感染症に関する臨床研究」に2億円、福武勝幸教授(東京医大)「HIV感染者発症・予防治療に関する研究」に1億円です。<エイズの医療体制に関する研究>は、南谷幹夫客員教授(杏林大)「HIV感染症の医療体制に関する研究」2億円と、吉崎和幸教授(大阪大)「エイズ治療の地方ブロック拠点病院と拠点病院間の連携に関する研究」1億1000万円です。

■ <エイズの疫学研究>は、木原正博技幹(神奈川県立がんセンター)「HIV感染症の疫学研究」1億9000万円です。<エイズに関する基礎研究>は、倉田 毅部長(国立感染研)「HIV感染/AIDSの感染病態とその生体防御に関する研究」1億1500万円と、武部 豊室長(国立感染研)「HIVの感染発症阻止方法開発のためのウイルス増殖と細胞反応の分子機構に関する基礎研究」8500万円です。

■ 南谷先生の研究班の中は、「エイズ治療拠点病院と地域医療機関・保健所・その他協力機関との連携に関する研究(南谷幹夫)」、「エイズ治療・研究開発センターとエイズ治療の地方ブロック拠点病院間の連携に関する研究(岡 慎一)」、「臨床現場における針刺し事故防止に関する研究(梅田典嗣)」、「HIV患者の歯科治療に関する研究(池田正一)」、「HIV患者の看護に関する研究(石原美和)」、「エイズ医療情報の収集・提供に関する研究(青木 眞)」、「エイズ拠点病院の機能評価に関する研究(河北博文)」、「臨床検査部門におけるエイズ対策に関する研究(今井光信)」、「エイズ診療拠点病院の整備に関する研究(瀬田克孝)」、 「エイズ問題に関する行政的対応に関する研究(加々美光安)」、「エイズ治療拠点病院における救急医療体制に関する研究(益子邦洋)」が分担されています。


用 語 解 説
インフォームド・コンセント

■ 医療における患者の権利として、自己決定権が語られています。「自分のことは自分で決めたい」これは誰もが望むことです。決めるためには判断する情報が必要です。医療現場では、情報が医療提供者側に偏在しています。従来は「お医者さんにお任せ」でした。患者さんの自己決定権を重視するなら、自然に患者さんの知る権利を尊重しなければなりません。

■ インフォームド・コンセントのステップは説明の部分が3つ、同意の部分が2つあります。1つめは、病状をわかりやすく説明することです。2つめは、勧められる方法(検査・治療)の利点と欠点が説明されることです。3つめは、変わりになる方法の利点と欠点の説明です。4つめは、質問の機会が与えられることです。5つめは、患者側の自主的な判断で同意または拒絶を選択することです。

■ インフォームド・コンセントは医療訴訟を避ける目的に行うのではありません。実際に同意書を文書として得ていても、提訴する権利は国民の基本的人権としてあるのですから。また知る権利の反対に、知らないでいる権利もあります。大切なことは患者の自主性を重んじることです。

■ エイズは致死的な病気であることから、ガンと似ています。しかし感染性の病気であるために、ほとんど例外なく告知を受けます。従来、告知は受けても、その後どんな方法があるのか提示されなかったことが問題でした。