変わってゆくエイズ治療薬 
  治験薬は拠点病院を優先  

● どんどん増える治療薬 ●
 この1年間にエイズ治療薬はかなり増えました。HIV逆転写酵素阻害剤であるddC(ザルシタビン、ハイビッドR)、3TC(ラミブジン、エピビルR)、d4T(スタブジン、ゼリットR)、そしてHIVプロテアーゼ阻害剤であるインジナビル(クリキシバンR)が市販されました。現在リトナビル、サキナビル、ネルフィナビルの治験が進行中です。また新しい非核酸系の逆転写酵素阻害剤であるネビラピンの治験も開始される予定です。

欧米の承認薬はオーファンドラッグに ●
 迅速認可制度はエイズを契機にアメリカで始まりました。従来の新薬の認可ステップとは異なり、優先的に審査して早期認可を行います。欧米の既承認薬はオーファンドラッグに指定され、開発費の半額補助と税制上の優遇が行われます。

● 優先的な審査と迅速認可 ●
 従来からある治験(臨床第2・3相試験)は「コア治験」と名づけられました。対象患者数も限定で、詳細なデータを求めます。コア治験が開始されたら平行して欧米の承認申請資料で審査を始めます。終了時点で欧米の資料と照らし合わせ、有効性や副作用に大きな差異が認められなければ承認となります。

● 拡大治験は拠点病院でもできる ●
 拡大治験は承認前でも、希望する患者に幅広く行き届くことが目的です。コア治験に比較してシバリが少なく、例数・期間の制限がありません。病院とメーカーとの間に治験契約を行うこと、インフォームド・コンセント、症例報告書が必要なことは同じです。[TAKATA]

<治験薬提供希望の連絡先>
厚生省医薬安全局審査管理課
TEL 03-3503-1711 内線 2789 FAX 03-3597-9535

● 本当の希少薬を研究班が配布 ●
 よく効く薬でも対象となる患者数があまりにも少ないと、メーカーは開発治験費がかかるので国内導入をしません。HIV感染症エイズではこのような薬があります。薬を確保するため、熱帯病治療薬にならった方法が採用されました。つまり研究費により研究班を編成し、患者が発生した場合に医薬品を供給する一方、症例報告を求めるというやり方です。これが厚生省のエイズ治療薬研究班で、班長は東京医大の福武勝幸教授です。研究班ではインターネットのホームページを通じて情報を公開しています。以下はその一部です。

● 副作用が出たら全部中止して・・●
 抗HIV薬による3剤併用療法の普及に伴い、これまで知られていなかった副作用の報告が徐々に増えており、貧血、肝臓障害、糖尿病など、一部は新聞誌上などにも大きく取り上げられています。現在、情報量が十分でないため治療担当医師や患者さんの間には不安があることと思いますが、定期的な診察と検査により重篤な副作用の発現を未然に防ぐことが最も重要です。
 副作用が発生し、理想的な服用量により治療を続けることが困難な場合は、全ての抗HIV薬の服用を一旦中止して、副作用が解消されるのを待って下さい。HIVは不十分な薬剤の服用量や不適切な服用法により薬剤耐性(薬が効かなくなること)を獲得すると考えられるからです。
 もし、HIVが薬剤耐性になると、飲んでいた薬だけでなく、現在使うことができる多くの治療法も同時に無効になる可能性が高いため、大変困ったことになる心配があります。
 担当医師は副作用について十分に説明し、対応方法を患者さんに理解していただいて下さい。くれぐれも患者さんは独自の判断で服用量を減らしたりすることがない様にお願いいたします。

  [代表研究者福武勝幸先生の'97/7/20の文章を高田が改編]


厚生省エイズ治療薬研究班のホームページ

HIV Web Dictionary

http://www.iijnet.or.jp/aidsdrugmhw/