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こんにちは。厚生省エイズ治療のための中国四国地方ブロック拠点病院、通称「中四国エイズセンター」です。1997年4月から、広大病院、県立広島病院、社会保険広島市民病院の3病院で運営してきました。本誌は、HIV感染症と血友病の診療に役立つ情報を主治医に直接お届けすることを目的に発行しています。もちろん、患者さんにお読みいただいても構わないと思います。皆様からのご意見、ご感想をお待ちしています。 |
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おくすりNEWS |
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■ 日本ベーリンガーインゲルハイム社は、HIV-1感染症治療薬「ビラミューン錠200」(Viramune tablets200、一般名:ネビラピン)を12月11日に新発売しました。本剤は非ヌクレオシド系あるいは非核酸系逆転写酵素阻害剤(NNRTI)で、1996年8月のアメリカを皮切りに約30ヶ国で市販されています。 |
■ 日本でこれまで5種類ある逆転写酵素阻害剤は核酸系で、NRTIと呼ばれています。NRTIは逆転写酵素によってヌクレオシドとしてDNA合成に利用されながら、鎖としてつながる手を持たないため途中で断絶させます。これに対しNNRTIは逆転写酵素の別の部位に結合して立体構造を変えて酵素活性を奪います。作用機序が違うのです。ということは耐性部位も異なります。 |
■ 本剤はこれまで行われた欧米での治験の結果、NRTIとの併用でシャープなウイルス量の減少とCD4細胞数の増加をもたらしています。長期併用投与例で十分な効果を持続しています。NNRTIは血中半減期が長く、1回1錠を1日1回か2回の服用ですみます。食事の影響も受けません。しかし183番目のアミノ酸が一つ変化するだけで、容易に耐性となり、しかも他のNNRTIにも完全な交差耐性を示すのが1番目の欠点です。 |
■ 本剤の2番目の欠点は、皮膚障害の副作用が多いことです。欧米では10%台、日本の治験では40%台で発生し、重篤なものではStevens Johnson症候群で死亡例(海外)も報告されています。全身症状を伴うものでは投薬を中止し、再投与もしないことです。他の副作用としては肝障害があります。本剤は最初の2週間は1日1回1錠を投与し、十分な観察で継続が可能であれば、1日2回に増量して続けます。 |
■ 本剤の位置づけはまだ定まっていません。現状では、(1)CD4数が保たれHIV RNA量も比較的少ない早期の患者に、(2)他の2種類以上のNRTIとの併用をすることで、(3)煩雑なプロテアーゼ阻害剤の使用を先延ばしにすることが期待されます。今後は副作用を減少させる工夫や、他の併用法の工夫がなされるでしょう。 |
■ 本剤は薬物代謝酵素であるCYP450を誘導しますので、併用する他剤に注意を払う必要があります。これまでのところ併用禁忌の薬剤はありません。本剤投与例は全数が市販後調査(HRD共同調査)の対象となりますのでご協力下さい。 |
■ 名前にご注意下さい。プロテアーゼ阻害剤の一つネルフィナビルは、商品名がビラセプトです。本剤と同様、一般名に「ネ」商品名に「ビラ」がつくのでうっかり処方ミスをする可能性があります。アメリカでは笑い話ではなく、実例があるそうです。[TAKATA] |
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出典:「日刊薬業」1998年10月23日掲載記事 |
厚生省医薬安全局は、米国で承認されたエイズ治療用医薬品を日本でも迅速に承認しようと、海外データを活用した申請前の事前評価と迅速審査を行い、申請後4ヶ月程度で条件付きで承認する方針を決めた。米国で承認を受けていることや、海外の用法・養老に基づくことによる有効性・安全性のリスクを添付文書に明記することなど条件となっており、国内臨床試験成績を承認後原則として1年以内に提出させ有効性・安全性に問題がなければ一部条件を解除する。すでに中央薬事審議会の調査会の了解を得ており、11月の特別部会に報告後通知を出す。 |
エイズ治療薬の3剤併用療法が普及しているが、そのうち1剤でも耐性になると、組み合わせを新しくしなければならず、このため薬剤の選択肢をどんどん増やしていく必要がある。日本で承認されているエイズ治療薬は核酸系逆転写酵素阻害剤5種類、プロテアーゼ阻害剤4種類の計9種類であるが、米国に比べてその後の開発が滞り気味。これまで厚生省は中央薬審にエイズ医薬品調査会を設けるなど、迅速審査を進めてきたが、それでもタイムクロックは平均で8ヶ月を要していた。 |
そこで、新たに海外データの事前評価と、海外データに基づく超迅速審査と条件付き承認を行い、申請から承認までを4ヶ月に短縮する方針を決めた。エイズ治療用医薬品(随伴症状治療薬を含む)については、米国での承認申請時を目途に審査センターと調査会による米国承認提出資料に基づく事前評価を受けることを可能にし、ブリッジング試験がないことによるリスクの代償など海外データによる承認可能性を判断。新生児の基本提出し量は、米国の審査概要(承認されていれば)と欧米での追加提出資料のみ。ただ、リスクが比較的大きい場合には、申請前の薬物動態(PK)試験の実施と新生児の提出が課せられる。 |
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■ 上記はマスコミの記事ですが、厚生省は平成10年11月12日に、医薬安全局審査管理課長(医薬審第1015号 )とエイズ疾病対策課長(健医疾発第86号)名の文書を通知しました。 |
■ これまでの日本の新薬承認制度とは相当違うことに驚きます。国際的な協調(harmonization)に従った新GCPが始まり、先に日本側が歩み寄ってアメリカの成績を受け入れるということです。これまでの場合「日本人は欧米人と民族差があるから薬の代謝などが異なる可能性があり、日本で臨床試験(治験)をやり直して効果が認められないと承認しない」というスタンスでした。ある意味では、従来の日本は護送船団方式で国内製薬企業の保護育成という面があったのでしょう。 |
■ エイズ関連の医薬品については日本では患者数が少ないため、旧来の方式では治験が完了し承認を得るまでに時間がかかりすぎていました。厚生省は1997年以降、中央薬事審議会の中に特別審査会を設け、迅速審査とコア試験・拡大試験で対処しました。拡大試験は承認まで続けられ、コア試験の5倍もの患者が登録され、治験薬と関連薬そして血液検査・画像検査が全部製薬企業に“特別療養費”として請求されたため、メーカーの過剰負担が問題になりました。さらに製薬企業は10年間の全数調査(HRD調査)が義務づけられ、開発経費の半分近くの費用が見込まれています。これでは製薬企業の国内導入意欲をそぐ結果になっていたのです。 |
■ 今後、拡大治験は不要になります。申請から早くて4ヶ月で新薬が市販されるようになり、製薬企業は早く経費の回収が可能となります。市販後に継続される成績がまとめられ、承認1年後に見直しが行われます。仮免許から本免許になるのです。患者さんにとっても、製薬会社にとってもメリットになることと思われます。 |
■ 現在の所、対象になる薬は口腔カンジダ症のクロトリマゾール・トローチ(Mycelex trocheR、バイエル薬品)、プロテアーゼ阻害剤(PI)のアンプレナビル(AgeneraseR、キッセイ薬品)と考えられます。今後は核酸系逆転写酵素阻害剤(NARTI)のAbacavirとAdefovir、NNRTIのDelavirdineとEfavirentz、PIのFortvase、結核と非定型抗酸菌治療薬のRifabutinなどが期待されます。[TAKATA] |
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■ 1998年7月29日、突然ダイナボット社のノービア・カプセル(一般名リトナビル)が手に入らなくなるというニュースで驚きました。ノービアじゃないと困る患者がいるのです。アボット社の製造工程での問題のようです。同社は液剤での使用を勧めています。液剤はエタノール濃度が42%で下戸や小児には向きません。また味が悪くチョコレートを食べるなど工夫が必要です。 |
■ 1999年4月頃までの現行カプセル剤は確保されています。新規に始める患者さんでは液剤で“試飲”が必要でしょう。同社はソフトゲルカプセル剤を急遽開発中です。待てる患者さんではそれまで待つのも手かも知れません。[TAKATA] |
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■ 厚生省は平成9年6月26日に「HIV感染症治療薬の再審査期間における共同使用調査について」という通知(薬研38号)を出しました。 |
■ 前の記事と関連していることですが、エイズに関連した新薬はオーファン指定を受け、少ない患者数で実施された臨床試験で承認を受けます。より多くの患者では頻度が低い副作用発生をモニターするには、市販後調査が必要です。他の薬剤とは異なり、これらの薬剤の投与を受けた全ての患者の記録を、10年間にわたって調査するのが本調査です。 |
■ 同じ患者が複数の新薬を投与された場合、登録の負担を減らすために1枚の報告で済ませるように工夫したのがHRD共同調査です。対象薬を処方される医師は調査にご協力下さい。[TAKATA] |
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学会REPORT |
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■ 6月29日〜7月3日、スイスのジュネーブ市で第12回国際エイズ会議が開催された。参加136カ国、参加者数13,000人、発表数9会場で5,000題。基礎や臨床の研究者の他に、行政、マスコミ、教育、心理社会、患者・感染者、セックスワーカーなど多彩な参加者による包括的な会議である。 |
■ 前回のヴァンクーヴァー会議ではHIV RNA検査の応用とプロテアーゼ阻害剤の併用で治療に大きな変化があったが、今回はもっと冷静な雰囲気になっていた。むしろHIVが隠れ住んでいる体内の細胞には寿命が長いものがあって、途中で手を休めるとまたHIVが出てくる。当初の2〜3年でHIVが消えるという期待は消え、今のところ治療は一生続くと覚悟しなければならない。また1ml中のHIV RNA量も50コピイとか5コピイ以下など、可能な限り低値に保つ方が400コピイ以下よりは長期的には優れているという成績が示された。超高感度測定法(Ultra-sensitive assay)の臨床導入が必要である。 |
■ HIV RNAが検出できると言うことは、複製のチャンスがあるということで、薬剤耐性HIVの出現のチャンスになる。薬剤耐性検査の試薬がいくつか発表され、アメリカでは保険の支払い対象になっていないが、検査を10万円で請け負う検査会社も現れた。多数の薬剤を経験して耐性になった患者から、無防備な性行為で耐性HIVが感染した実例も報告された。この例は接触から数日後に発熱があり、初診のサンフランシスコの開業医は急性HIV感染症と診断している(HIV抗体陰性、HIVp24抗原陽性など)。 |
■ 治療面では近くアメリカで認可になる予定の薬が目についた。服薬回数の減少、耐性HIVにも効果が期待できそうだ。従来薬の中では、プロテアーゼ阻害剤を2剤同時に使う方法が試みられてきた。救済療法と言うより初回療法になるかもしれない。多くの症例を扱った比較研究の結果を待ちたい。 |
■世界のHIV感染者の中で、検査を受け、治療を受けているのは先進国に住む1割だけである。このような南北格差の他に、医療レベル、患者背景、性差や年齢差などで不公平が沢山ある。国際会議のテーマは「ギャップに橋渡し」というものだったが、「あらゆる面でギャップはますます広がっている」とため息が出た。次回(2000年)は、南アフリカのダーバン市、次々回はスペインのヴァルセローナ市に決まった。[TAKATA] |
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■ 1998年12月1〜2日、東京で開催されました。基礎系の山本直樹教授(東京医科歯科大学)が会長をつとめられましたが、治療の進歩を反映して特別講演も臨床系が多く配置されました。「抗HIV療法とアドヒアランス 失敗しないためのポイント」というサテライトシンポジウムに多くの参加者が集まり、「医療者も患者も新しい世代に入った」という感慨がありました。 |
■ この学会は医師、看護職、薬剤師、検査技師などの医療職以外に、心理、MSW、行政、教育、ボランティア、さらに患者も加わったユニークなものです。 |
■ 次回は1999年12月1〜3日間、東京都立駒込病院感染症科医長根岸昌功先生を総会長のもとに、東京で開催されます。 |
■ 本学会もようやく定期刊行物「日本エイズ学会誌」が発行されることになりました。1号と2号の合併号の出版は1999年5月が予定されています。これに伴い年会費は10000円になります。[TAKATA] |
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News Update |
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出典: | Office of Communications, NIAID(National Institute of Allergy and Infectious Diseases), アメリカ保健福祉省, July 1998 |
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1997年末の時点で世界には3,060万人のHIV感染者/エイズ患者が生存中であり、 そのうちの2,950万人が成人、110万人が15才未満の小児である。*1) |
2 |
世界的に見ると15才から49才の成人の100人に1人がHIVに感染している。*1) |
3 |
HIV感染/エイズの2,950万人のうち、およそ41%は女性であり、この比率は増加傾向にある。*1) |
4 |
1997年だけで世界で580万人が新たにHIVに感染したと推定され、1日あたりは16,000人である。新規感染者の90%は発展途上国で発生している。*1) |
5 |
2000年までに世界のHIV感染者数は4,000万人になるであろう。*1,2) |
6 |
1997年までの世界のHIV/エイズに関連した累計死亡数は1,170万人となり、900万人は成人、270万人が小児である。*1) |
7 |
1997年だけで世界のHIV/エイズに関連した疾患による死亡者数は230万人であり、15才未満の小児では460,000であると推定されている。*1) |
8 |
HIV/エイズの流行が始まって以来、世界でおよそ820万人の15才未満の小児が、HIV感染の両親が早く死亡することにより孤児になった。*1) |
9 |
世界中では、成人HIV感染者の75%以上が異性間の性交渉で感染した。*2) |
10 |
世界の幼児と小児の90%以上が、母子(垂直)感染によるものである。*1,2) |
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1 |
アメリカでは1997年12月31までに641,086人のエイズ例がCDCに報告された。*4) |
2 |
これらのうち534,532人(83%)が、13才以上の男性であり、98,486人(15%)が13才以上の女性であり、8,086(1%)が13才未満の小児である。*4) |
3 |
CDCに報告される新規エイズ患者数は、1996年前半の33,590人から、1997年前半は29,520人へと12%減少した。*7) |
4 |
1985年から1997年にかけて、毎年報告されるアメリカ女性のエイズ例は、7%から22%へと増加した。*4) |
5 |
1997年にアメリカで報告されたエイズ例の内、45%が黒人、33%が白人、21%がヒスパニックであり、アジア/太平洋地域とアメリカインディアンとアラスカ原住民は1%以下であった。*4) |
6 |
1997年のアメリカでは、アメリカの人口10万人あたりのエイズ例数は、黒人で83.7人、ヒスパニックで37.7人、白人で10.4人、アメリカインディアンとアラスカ原住民で10.4人、アジア/太平洋地域で4.5人であった。*4) |
7 |
最近の研究によるとアメリカ国内には650,000人から900,000人のHIV感染者が生存中と推定された。*5) |
8 |
1997年7月の時点で、アメリカでは259,000人のエイズ患者が生存中である。*7) |
9 |
1997年にエイズと診断された男性では、男性から男性への性的接触による感染が最も多く(45%)、次が麻薬注射である(22%)。*4) |
10 |
1997年にエイズと診断された女性では、ほとんどがHIV感染の危険を持った男性との性的接触(38%)か、麻薬注射(32%)である。*4) |
11 |
アメリカのエイズ例の中では異性間の性感染が増加中である。1991年から1996年にかけて、アメリカの成人エイズ例は8.5%から17.5%へと毎年増加した。*4) |
12 |
1997年12月までに、CDCには390,692人のエイズ例の死亡が報告された。*4) |
13 |
現在、エイズは25才から44才までのアメリカ人の死亡原因の第2位となっている。*6) |
14 |
1995年にはアメリカでは推定50,140人のエイズ例の死亡があった。1996年にはアメリカのエイズ死亡例は38,780人で23%減少した。*3) 1996年前半のエイズ死は21,460人で1997年前半では12,040人となり、44%の減少を見せた。*7) |
参考文献 | |
1) | UNAIDS: June, 1998. |
2) | Quinn T.: Lancet 1996;348:99-106. |
3) | CDC: MMWR 1997;46(37):861-867. |
4) | CDC: HIV/AIDS Surveillance Report 1997;9(no.2):1-44. |
5) | Karon JM, et al.:JAMA 1996;276(2):126-131. |
6) | CDC: Monthly Vital Statistics Report, 1997. Vol 46, no. 1, suppl.2. |
7) | CDC: Fact Sheet, February, 1998. |
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■ NIAID(アメリカ国立アレルギー感染症研究所)のホームページから取ってきた統計情報です。このように、日本とは桁違いの数字を見るとため息がでます。これらの数字の一つ一つに泣き笑いをしている人間の生活があるのだと思うと、何ができるのかと無力感を感じます。 |
■ 21世紀の最初の頃に、エイズは世界中で人類を殺す第一の感染症になるでしょう。日本の私たちだけが無関係であることはあり得ません。残念ながら、日本の新規HIV感染者数は予測された通り直線的な増加を見せており、横這いや下向きになりません。これから着実に増えていきます。目を覚まさなければなりません。でも私は日本人は馬鹿ではないと思います。これだけ教育と、情報があるのです。それぞれの人が自分の持ち場で、ちょっとだけ努力することで、最低限度の感染者数にとどめることができると思います。[TAKATA] |
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Mini News |
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■ アメリカはエイズの調査を変えようとしています。これまでアメリカは連邦としてはエイズ発病と死亡をカウントしてきました。ところが治療の進歩で1993年をピークに発病者が減少し、1995年をピークに死亡者が減りました。このため国内の感染動向と医療や公衆衛生対策に信頼できる疫学情報が足りなくなったのです。すでに35の州が感染者の届け出を義務化しています。CDCでは新しい提案をホームページに掲載し、国内の意見を求めています。![]() |
■ 日本はエイズ予防法によってHIV感染者、エイズ患者の発生、発病、死亡を届け出ることを義務づけています。2ヶ月ごとの届け出数はほぼ120人で、感染者:発病者=2:1の比率です。発病してみつかる例が多すぎます。1999年4月には現行のエイズ予防法が廃止され、新しく始まる「新感染症予防法」でもサーベイランス事業は続けられる予定です。[TAKATA] |
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TOPICS |
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■ 吉崎班の班会議が1998年6月に大阪で開催されました。平成10年度の目玉はピクチャーテル(商品名)というテレビ会議システムを使った“遠隔地医療”ということになりました。専用にISDNを3本束ねた回線で、きれいな音声とともに高画質の動画をモニターに2画面映し出せます。見た目は1対1の通信は相手の電話に、複数の施設がやるときは、NTTの太い回線つきのノードに電話をかけます。CCDカメラはモニターの上に乗っていて、音のセンサーで発言者の方にカメラが向きます。この装置一式が10月に広大病院にも設置されました。 |
■ パソコンや別のビデオカメラ、ビデオデッキからも画像を出せます。手元の赤外線リモコンは、ゲーム機のような方向キーやいくつかのキー操作で、音量調整や、自分や相手のカメラをリモートコントロールできます。別なカメラでレントゲン写真を見せることもできるし、患者さんの様子を鮮明に写すこともできます。 |
■ 臨床で困った患者さんの映像をすぐに送って、直接コンサルテーションという時代にはすぐならないと思います。当面は、準備されたプログラムを交換することになるでしょう。定期的な合同ミーティングやオンラインの講演を交えれば、会議の出張費を安くすることができます。21世紀の医療の先取りには違いないでしょう。しかし遠隔医療システムと言っても、ブロック拠点病院と拠点病院の間の通信じゃないところが問題です。少ない患者さんしか診ていない地域の拠点病院が、将来このようなシステムを揃えるにはどのくらい先になるでしょうか。[TAKATA] |
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エイズ患者に最新の治療を行うため、厚生省は十日までに、患者の診療記録を一元管理するネットワークシステムを来月から試験運用することを決めた。全国のエイズ患者の治療に携わる各地の病院を専用回線で結び、症状や投薬記録などさまざまなデータを共有することで治療水準の地域格差をなくすのが目的。当初は五つの主要病院間で運用し、来年度中にも三百六十一の指定病院間のネットワーク化を目指す。特定の疾患について患者記録を一元管理するのは例がなく、同省は「がんなどほかの疾病でも、同様のシステムを検討したい」としている。 HIV訴訟原告団との協議もまとまり、実現の運びとなった。これまでに約七億円を投じ、ACCと国立仙台、国立名古屋、国立大阪、九州医療センターの五つの病院を結ぶネットワークが完成、年内に七十一の国立病院・療養所に広げられる。来年度中にも三百六十一の全国の拠点病院すべてのオンライン化が整う。 |
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■ これは“恒久対策”の事業の一つで「A-net」と名づけられた“診療支援システム”です。“電子カルテ”に近い概念ですが、“カルテ”には法的文書の性格があるので現時点では電子カルテと呼びません。患者の属性や背景、症状、身体所見、臨床検査、画像情報、組織検査情報、看護記録、投薬・処置、服薬援助など、多彩な情報を盛り込んだ巨大なデータベースです。参加には患者さん本人の承諾書が必要です。諸外国にも例がないシステムで、21世紀医療の実験あるいは先取りという印象があります。 |
■ 専用回線とは、国立病院など厚生省傘下の病院を結んだHOSPNETというLANを利用するものです。外部との接続がありませんから、セキュリティは内部対策でよいのです。ホストコンピュータはACCに置き、ホストのダウンに備えて、毎晩国立大阪病院のサブサーバーに転送してバックアップを行います。しばらく実験を続けます。来年度以降の全国化に関しては、セキュリティ技術を高めた上で、公衆回線(インターネット)の利用になるようです。 |
■ 同意を得た自施設の登録患者については、他の病院の受診記録も端末から参照できるのが特徴です。他の患者については参照することができません。ACCでは1,000例の登録を見込んでいるようです。患者さんがたびたび病院間を移動しなければ、一つのカルテ、一つの病院のデータベースで完結しており、メリットが生じません。共通入力フォームと美しい説得力のある打ち出しができれば喜ばれるでしょう。 |
■ 病院間でデータを共有すると言うことは、個人名を外して全体のデータを解析することに2番目の意義があります。未知の病状や薬の副作用を発見する可能性があります。疫学研究、あるいは臨床研究にとっては格好の材料になるはずです。ただし患者登録にバイアスが入りますので、日本のエイズ患者を代表するものではありません。 |
■ データベースで最大の問題は入力です。各病院のシステムとは切り離されていますから、人間の手でキーボード入力です。試行されているものは項目数が多すぎるように思います。書き込まれたデータの一覧はコピイすることは許されないようです。全体的な計画・実施を監視する独立した諮問委員会が必要だと思います。 |
■ 将来はさておき、「本当にこんなシステムが今必要なんだろうか」と少々懐疑的になります。国立病院間への拡大は厚生省予算でできますが、大学病院や市中の病院に広げるには、新たなハードルが出てきます。最初の実験で、どこまで成功するかが鍵になるでしょう。[TAKATA] |
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総括 | 吉崎和幸 |
大阪大学健康体育部 健康医学第一部門 |
〒565-0871 吹田市山田丘 2-1 |
tel:06-879-8961 fax:06-879-8971 | yoshizak@imed3.osaka-u.ac.jp |
北海道 | 小池隆夫 |
北海道大学医学部 第二内科 |
〒060-0815 札幌市北区北15条西7丁目 |
tel:011-716-1161 fax:011-736-0958 | tkoike@med.hokudai.ac.jp |
東北 | 佐藤 功 |
国立仙台病院 内科病因研究室 |
〒983-0045 仙台市宮城野区宮城野 2-8-8 |
tel:022-293-1111 fax:022-291-8114 | - |
関東・甲信越 | 荒川正昭 |
新潟大学医学部 第二内科 |
〒951-8510 新潟市旭町通一番町 757 |
tel:025-227-2200 fax:025-227-0775 | - |
北陸 | 河村洋一 |
石川県立中央病院 診療部 |
〒920-0064 金沢市南新保町又153 |
tel:0762-37-8211 fax:0762-38-5366 | - |
東海 | 内海 真 | 国立名古屋病院第5内科 |
〒540-0001 名古屋市中区三の丸 4-1-1 |
tel:052-951-1111 fax:052-951-0664 | - |
近畿 | 白阪琢磨 | 国立大阪病院総合内科 |
〒540-0006 大阪市中央区法円坂 2-1-1 |
tel:06-942-1331 fax:06-946-3589 | sirasaka@onh.go.jp |
中四国 | 高田 昇 | 広島大学医学部附属病院輸血部 |
〒734-8551 広島市南区霞 1-2-3 |
tel:082-257-5581 fax:082-257-5584 | takata@aids-chushi.or.jp |
九州 | 山本政弘 | 国立病院九州医療センター内科 |
〒810-0065 福岡市中央区地行浜 1-8-1 |
tel:092-852-0700 fax:092-847-8801 | - |
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AIDS on LINE |
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■ 厚生省HIV疫学研究班(班長:木原正博)の平成9年度報告書が掲載されています。研究班の報告書は刊行されても研究者間や、せいぜい大学図書館などに納められ、多くの人がアクセスするのはかなり面倒なものです。今回、全記事をウェブで公開されたということは、非常に画期的です。元はと言えば国民の税金が使われた研究成果であり、これを公開するのは研究者の義務のような気がします。 |
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■ ヤフーの使い方でこんな便利なものがあるとは知りませんでした。上記のURLをあなたのブックマークに登録しておきましょう。常に新しい文献がアップデートされます。 |
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■ pdf版で約435KB、印刷で約54ページです。練習問題集も添付されています。この文書はエイズに直接関連はありませんが、HIV感染者で非常に多く合併するC型肝炎についての記事です。HCV感染の予防、検査とカウンセリング、適切な医学的管理について記しています。 |
サイト名:aegis.com |
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■ 前に紹介したかも知れないけど、イージス(AEGIS)はボランティアベースで運営しているサイトのようです。集めて提供される情報は、医学記事つまりpeer reviewd jounalばかりではなく、ロイター、ワシントンポスト、ニューヨークタイムズ、ウォールストリートジャーナルなど有名な通信社、新聞社のエイズ配信記事が、毎日載っています。CDCのAIDS Weekly newsのミラーサイトにもなっているようです。 |
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■ thomsonという会社は有名な医学専門雑誌「AIDS」を発行しています。abstractだけは無料ですからお試し下さい。subscribeとすると有料で記事を取り込むことができ、一種のオンライン出版です。まるで雑誌をお金を払ってコピイする感覚です。会社にすれば良い記事は出版後も売れる、自動決済ができる、顧客管理ができる、印刷数を増やす必要がなく、不良在庫が減るというメリットがあるでしょう。 |
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編集後記 |
■ ニュースレターは紙のメディアで記録性が高いのですが、即応性に欠けます。特にエイズの業界は変化が早く、インターネットやe-mail以上の情報手段は考えにくいと思います。私たちのホームページをご活用下さい。【TAKATA】 |
●通算4号目のニュースレターとなりました。3号から4号のレターが出る間にも、HIV/AIDSをめぐる状況は大きく変化していることが分かります。中四国エイズセンターでは、インターネットなどの電子ツールと、ニュースレターという紙面ツールとの二本立てで、新しい情報をいち早くお伝えしたいと思っています。今後も5号6号と続けて、より新しく、みなさんに役立つようなよい情報をお送りしていきます。【OE】 |
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資料のコーナー |
番号 | 主任研究者 | 所属施設・職名 | 研究課題名 |
交付予定額 (単位:千円) |
1 |
田代 啓 |
京都大学遺伝子実験施設助手 |
HIVの病原性決定因子に関する研究 |
30,000 |
2 |
山田章雄 |
国立感染症研究所筑波医学実験用霊長類センターセンター長 |
HIV病原性の分子基盤の解明に関する研究 |
55,000 |
3 |
木村 哲 |
東京大学大学院医学系研究科教授 |
HIV感染症に関する臨床研究 |
200,000 |
4 |
福武勝幸 |
東京医科大学主任教授 |
HIV感染者発症予防・治療に関する研究 |
100,000 |
5 |
南谷幹夫 |
都立駒込病院非常勤医員 |
HIV感染症の医療体制に関する研究 |
200,000 |
6 |
吉崎和幸 |
大阪大学健康体育部部長 |
エイズ治療の地方ブロック拠点病院と拠点病院間の連携に関する研究 |
120,000 |
7 |
木原正博 |
神奈川県立がんセンター 臨床研究所研究3科技幹 |
HIV感染症の疫学研究 |
190,000 |
8 |
倉田 毅 |
国立感染症研究所感染病理部部長 |
HIV感染/AIDSの感染病態とその生体防御に関する研究 |
100,000 |
9 |
武部 豊 |
国立感染症研究所エイズ研究センターエイズ疫学室室長 |
HIVの感染発症阻止方法開発のためのウイルス増殖と細胞反応の分子機構に関する基礎研究 |
65,000 |
10 |
吉倉 廣 |
国立感染症研究所副所長 |
エイズ対策研究事業の企画と評価に関する研究 |
20,000 |
11 |
岩本愛吉 |
東京大学医科学研究所教授 |
我が国におけるHIV診療ガイドラインの開発に関する研究 |
25,000 |
計 | 1,105,000 |
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