Vol.2 No.1 1998年7月1日

発行:〒734-8551広島市南区霞1-2-3

広島大学医学部附属病院輸血部内

中四国エイズセンター事務局

Tel 082-257-5581, Fax 082-257-5584

編集:高田 昇、大江昌恵

e-mail: takata@aids-chushi.or.jp


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CONTENTS

中四国エイズ対策事業

エイズカウンセラー派遣制度

ブロック拠点病院の整備

HIV救済事業

エイズセンタースタッフ研修手記

TOPICS

おくすりNEWS

文献紹介

中四国ブロック掲示板

MESSAGE

こんにちは。厚生省エイズ治療のための中国四国地方ブロック拠点病院、通称「中四国エイズセンター」です。1997年4月から、広大病院、県立広島病院、社会保険広島市民病院の3病院で運営してきました。本誌は、HIV感染症と血友病の診療に役立つ情報を主治医に直接お届けすることを目的に発行しています。もちろん、患者さんにお読みいただいても構わないと思います。ご意見、感想をお待ちしています。


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【中四国ブロックエイズ対策事業】

中四国ブロックのエイズ対策事業は、広島県、3つのブロック拠点病院、そして広島県臨床心理士会によって実施されています。平成9年度は実質半年あまりの活動でしたが、報告書が作成され全ての拠点病院に配布される予定です。一部を紹介します。

☆講演会・研修会の参加者数1305名☆

■ 広島県が各県と共催して実施した各種の講演会・研修会は17回で、参加者総数は1305名でした。ブロック拠点病院のスタッフ延べ11名が研修を受けるために派遣されました。拠点病院の連絡会議では、国立国際医療センターの岡 慎一先生の講演が行われました。

☆カウンセリングのより一層の充実を☆

■ 広島県と広島市では従来からカウンセラーの派遣制度を実施していますが、他県では実現していません。平成9年度から全県に対してもカウンセラー派遣事業が始まりました。まだ周知が不充分と思われます。派遣カウンセリングについては広島県臨床心理士会にお問い合わせ下さい。

☆診療支援と教育活動を重点的に☆

■ 今年は各県レベルの講演会・研修会の他に、個別の拠点病院に対し、診療支援と教育活動を増やしたいと思います。特にHIV感染者の診療を行っている医療機関を優先し、個々の患者さんの治療相談を受けたいと思います。必要経費は対策事業の中で支弁できます。お申し込みはe-mail、手紙、電話、ファックスなどでご連絡下さい。

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【中四国エイズカウンセラー派遣制度】

☆ カウンセラーを派遣します ☆

■ 中四国地方のエイズ拠点病院からの要請があれば、専門のカウンセラーが派遣できる制度があります。派遣先が広島市内では、広島市(広島市保健所地域対策課、tel:082-241-7401)が、広島県内では広島県(委託先:広島県健康福祉センター)が、それ以外の中四国ブロック内では広島県(委託先:広島県臨床心理士会)が対応します。是非ご利用下さい。

■ 広大病院ではエイズ予防財団の支援を受け、専門の心理職によるカウンセリングは10年目です。すでに50人以上の感染者・家族・遺族がカウンセリングを受け、延べ700時間になりました。

■ エイズ流行の当初から心理カウンセリングの必要性が叫ばれてきました。アメリカでは心理的ケアや社会的ケアがチームとして提供できなければ、エイズケアの指定医療機関として行政からの援助が得られません。

■ 日本では心理職が国家認定になっておらず、心理ケアに対する経済的評価(保険点数化)が与えられていません。精神科診療で心理検査を行う医師の診療補助を除くと、心理職(臨床心理士、心理療法士など)を雇い入れている医療機関は極めて少数です。医療における心理職が確立しない現状で、サリン事件や神戸震災後のPTSや学校カウンセリングなどで、心理カウンセリングへのニーズは高まっています。

■ 広島県臨床心理士会の兒玉憲一先生は、拠点病院の心理担当者の中で、実際の患者に面接した経験を持つカウンセラーは少数であると報告しています。ブロック内にはエイズ研修を済ませた心理専門家がいるのに利用されていないのです。このためカウンセラーの関心が低下する心配があります。広報活動の不足や、医療機関のカウンセリングに対する無知あるいは無理解があるのかもしれません。 【END】


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【地方ブロック拠点病院の整備】

☆拠点病院全国8ブロックに整備☆

■ 1997年12月12日付けで、関東甲信越ブロックの拠点病院として、新潟大学医学部附属病院、新潟県立新発田病院、新潟市民病院が決定し、これでようやく全国8ブロックが揃いました。同ブロックは、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県の1都9県の広域で、カバーする人口も感染者数も桁違いです。

■ 関東甲信越ブロックのエイズ拠点病院は100ヶ所あります。また東京には一つの病院で百人以上の感染者を抱える施設がいくつもあり、病院間の連携もできています。ブロック拠点病院の仕事は私たち、中四国ブロックとはかなり異なって当然でしょう。新潟の先生達は、指定が遅れた分も含めて、それなりに大変なご苦労がおありだろうと思います。

■ この他の7つのブロックとブロック拠点病院は次の通りです。北海道:北海道大学医学部附属病院、旭川医科大学医学部附属病院、札幌医科大学医学部附属病院。東北:国立仙台病院。東海:国立名古屋病院。北陸:石川県立中央病院。近畿:国立大阪病院。中国・四国:広島大学医学部附属病院、県立広島病院、社会保険広島市民病院。九州:国立病院九州医療センター。

■ もともと、この枠組みはエイズ医療の地域格差をなくすために、薬害HIV原告団の強い希望があって実現したもので、北陸ブロックと似て、日本海沿岸側の医療にテコ入れをしたいという願いを感じます。【END】


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知っていますか?

【HIV救済事業】

☆和解が済んだかどうかがポイント☆ 

 医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構(略称:医薬品機構)は、財団法人友愛福祉財団の委託を受けて、@受託給付事業、A調査研究事業、B健康管理支援事業を行っています。3つの事業は、裁判上の和解が済んだかどうかで対象が異なります。和解が済んでない患者→@Aです。和解が済んだ患者→ABです。
(1) 受託給付事業
■ 内容:血液製剤によりHIVに感染しエイズを発症した方に、医療手当(月額36,130円)、特別手当(18才以上は月額265,030円、18才未満は107,730円)、遺族見舞金(月額200,100円、最低3年間は支給、合計10年間が限度)、遺族一時金(全額一時金は7,203,600円から既に支給した遺族見舞い金を引いた額)、又は葬祭料(175,000円)の給付を行います。二次、三次感染者や日赤製の血液製剤も含まれます。それぞれに請求の期限や給付条件(省略)があります。特別手当、遺族見舞金は請求の翌月から支給です。給付額は平成10年4月1日現在のものです。
 
(2) 調査研究事業
■ 内容:血液製剤によりHIVに感染した方に、発症予防のための健康管理費用の支給を行います。対象は同上です。対象者は四半期ごとに日常報告と健康状態報告を記載し年度末に提出します。健康状態報告は医師が記載しなければなりません。CD4数やHIV RNA検査が含まれています。CD4数が200/μl以下では月額52,130円、それ以外は36,130円です。
 
(3) 健康管理事業
■ 裁判上の和解が済んでいてエイズを発症している方に、健康管理手当の支給を行います。月額150,000円です。

☆ 資料請求は医薬品機構へ ☆

■ どの事業も感染者(あるいは代理人)が、医薬品機構と直接連絡をとって資料を請求して下さい。電話は03-3506-9415(直通)業務部調査役です。医薬品機構は認可法人で公務員と同様の守秘義務が課せられていて、細かな配慮をしてくれます。医師は患者さんにこのような事業があることを教えてあげて下さい。

< MEMO >

医薬品機構(略称)

医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構

業務部受託給付・調査研究担当

〒100 東京都千代田区霞ヶ関 3-3-2

新霞ヶ関ビル9階

:03-3506-9415 Fax:03-3506-9417

この記事と同じ内容がインターネットでもご覧になれます

http://www.iijnet.or.jp/iyakuhin-kiko/


【厚生省はHIV訴訟を待っています】

■ 変な言い方ですが、平成8年3月に最初の和解が成立したときから、厚生省はHIV訴訟を待っています。和解の中で「裁判所に訴えの提起を待って順次和解を進めていく」と記されているからです。HIV感染被害者を診ているお医者さんは、必ずこのことをご本人・ご家族に伝えて下さい。各地に弁護団が結成されていますが、東京または大阪の弁護団に連絡すれば、弁護士を紹介してくれます。連絡先は下記の通りです。【END】

【連絡先】

<大阪HIV訴訟弁護団事務局>

〒530-0047 大阪市北区西天満4-4-13

梅新高橋ビル10階 川崎・横井・須藤法律事務所内

:05-361-8303 Fax:03-364-3894

<東京HIV訴訟弁護団事務局>

〒130 東京都文京区大塚3-9-10

文教KSビル2階 鈴木利廣法律事務所内

:03-3941-2472 Fax:03-3941-2473


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私達のスタッフがエイズ海外研修に参加しました

中四国エイズセンタースタッフの中から、加藤恭博医師がサンフランシスコに、岩崎真理看護婦がハワイにエイズ研修に出かけました。ご報告を兼ねて以下に二人の研修手記を紹介します

〜ドクター加藤のサンフランシスコ研修〜

サンフランシスコ・エイズ研修を終えて

         広島大学医学部小児科

               加藤恭博

 みなさん、こんにちは。去る平成9年10月5日から19日の約2週間、サンフランシスコ・エイズ研修に参加しましたので報告します。今回私が参加したプログラムは、正確にはIMPACT(International Medical Program for AIDS Clinical Training)という仰々しい名前が付いており、厚生省とその外郭団体である財団法人エイズ予防財団とが協力し、エイズ拠点病院のエイズ医療向上に貢献するために設けられた、医療従事者向けの海外実地研修事業のひとつなのです。IMPACTは、エイズ研究・治療で有名なカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF; University of California, San Francisco)に属し、HIV感染予防に主眼をおくエイズ予防研究センター(CAPS; Center for AIDS Prevention Studies)という研究機関が、諸外国に提供している研修プログラムの1つでもあります。

 皆さんはサンフランシスコという街からいったい何を連想されるでしょうか? 霧のかかった美しいゴールデンゲートブリッジ、坂道をゆっくり登るお茶目なケーブルカー、世界最大といわれるチャイナタウン、世界で3本の指に入るといわれる魅惑的な夜景などはつとに有名ですが、なかにはヒッピーやゲイのメッカであることを思い浮かべる方もいらっしゃると思います。

 さて、本題のエイズに話を変えます。現在までに全米で約50万人がエイズを発症し、そのうちすでに約35万人が死亡しています。そして現在のHIV陽性者は約150万人と推測されるため罹患率は約0.5〜0.6%ということになります。サンフランシスコでは全人口70万人に対しHIV陽性者が3000〜5000人おり、罹患率は0.7%と他の地域よりやや高いようです。

 最近のエイズ事情ですが、鳴り物入りで登場したプロテアーゼ阻害剤を含めた多剤併用療法のおかげで、1997年秋サンフランシスコのエイズ前線は、ものすごい勢いで新たな段階へ移行しようとしていました。患者死亡の激減、入院患者の外来治療への移行(入院日数は平均3日のみ)、多くのエイズ診療所・病棟・ホスピスの閉鎖や縮小、少なからぬエイズ専門医の専門分野の鞍替え、エイズ関連の医療従事者のレイオフと、それによる一人当たりの労働量増加などなど、自分の目で実際に見てもにわかには信じられないような出来事が次々と起こっていたのです。

 ある医師は私たちに「我々は少しばかり頑張りすぎたようだ。」と苦笑しながら語ってくれました。言ってみれば私たちは楽観的なムードのまっただ中でエイズ研修を行ったわけですが、その一方で耐性ウイルスの出現、condomの使用頻度の減少、25歳以下の若年者が新たなHIV感染の50%を占めていること、AIDS以外の性感染症が増加傾向にあるという事実などを知りました。

 これに関連してCAPSの医師であるMitchel Feldmanが我々に言った、「honeymoonは終焉に近づいているのかもしれない。我々医師の責務のひとつは、市民に対し口を酸っぱくして予防教育することである。人間とはすぐに油断するものなのだ。」という言葉が非常に心に残りました。幸い日本では現在のところHIV感染者数は激増してはいませんが、教育の荒廃、長引く不況と政府の医療費抑制政策、1つの話題について熱しやすく冷めやすいという日本人の気性などを考えたとき、アメリカと同じ過ちを今後わが国が繰り返さないとも限らないという不安が一瞬頭をよぎりました。

 UCSF小児科の状況ですが、現在生存している72名のHIV感染者のうち、90〜95%が母子感染によるもので、その他血液製剤で感染した血友病患者や、メキシコでの輸血で感染した例が少数あるとのことでした。IVDU(intravenous drug user)症例はゼロ、またハイリスク症例の管理が徹底された結果、産科では年間500例前後の感染妊婦を診ているにもかかわらず、ここ数年間エイズベビーの出産はないそうです。

 小児科・内科・stomatology(口腔内科とでも訳すべきでしょうか)・産婦人科・ER(emergency room)でエイズ診療に立ち会いました。楽観ムードのせいもあってか、患者さんに私たちの同席を拒否されることはほとんどなく、笑顔で接してくれたのはとてもラッキーでした。タタミ4畳ぐらいの狭い密室で診療することで患者さんのプライバシーを確保し、対話にじゅうぶん時間をかけるため、患者の医師に対する信頼がとても厚いのに驚きました。患者さんやその家族に必ず内服薬を暗唱させて怠薬しないよう徹底してもいました。

 また院内感染予防については、UCSFSFGHではuniversal precautionという概念が、かれこれ10年ぐらい前からあるとのことです。私ならついつい、universal precautionとは医療従事者を含めた非感染者を感染者の体液から守ることだと考えてしまうのですが、彼の地では、あくまで免疫能の低下したエイズ患者への重感染を防ぐという発想が基本となっている点が注目されました。

 HIV感染者に対するケアやサポートを見学していくうち、わが国と大きく違うなと感じたのは、(1) HIVスクリーニング検査を受ける人や患者などへのカウンセリングと(2)ボランティア活動・精神の2つです。とりわけ社会・心理的な側面の強いエイズでは、peer(=対等な立場での)counselingの果たす役割は大きいと思うのですが、カウンセラーになるという概念は日本ではまだまだ浸透していません。

 もちろん今の日本の保険医療制度の中では精神的なケアをする余裕はあまりなく、エイズ専門のカウンセラーの育成や制度の整備が急務だなと感じました。また、アメリカでは電話相談、エイズ孤児の里親、女性患者専門の悩みの相談室、通訳などエイズ・ケアのかなりの部分を、多数のボランティアや市民からの寄付が支えているのです。

 陽気で親切なSan Franciscan、本当に見渡す限りの毎日の青い空、Fisherman's wharfという漁師町で食べたクラムチャウダーの味、Columbus Dayを祝って市の上空でアクロバット飛行を披露してくれたブルー・インパルス、休日に出かけたヨセミテ国立公園の大自然のすばらしさ、Stanley Prusinerが自ら命名したプリオンに関する業績で今年のノーベル賞を受賞し、UCSF学内の一部が沸いていたこと(もっともUCSFのノーベル医学生理学賞受賞は彼で通算12人目とか)など、たった2週間の研修ではありましたが、サンフランシスコで体験したこと一つ一つが本当に貴重なものでした。

 その感激のせいか、wrap upで現地の医師やコーディネーターから研修についての感想を聞かれたとき、次の美しい文章が自然に口をついて出てきたのです(ご存じの通りキザな言葉が全然似合わない男なのですが・・)。"I'm going to leave my heart in San Francisco"

 今回のかけがえのない経験を広島で少しでも生かすことができればと感じつつ、死ぬまでにいつかまたサンフランシスコに来るぞという誓いを胸に、成田行きの飛行機に乗り込んだのでした。[1997年11月11日] 


〜ナース岩崎のホノルル研修〜

エイズ海外研修を終えて

エイズ予防財団リサーチレジデント

          岩崎真理

 こんにちは。岩崎真理です。25才、1児の母、看護婦です。年明け早々、ハワイへ2週間の研修に行ってきました。帰国後、他のスタッフに「半分は遊びだったんでしょ?」などと言われるとすごーく腹が立つくらい濃厚な内容で、時間的にもきつかった。ま、空き時間にはショッピングぐらいしたけどね。土日にはビーチに行ってシュノーケルもしたけどね。(海はきれいで気持ち良かった!) そんなわけで、その濃い研修のなかで、特に印象に残ったことを、日米の違いに重点をおいて書いてみます。「こんな考え方もあるんだ。」と参考にしていただければ、と思います。

★「インフォームド・コンセント」

 ハワイでは、患者さんに全ての情報を与え、それによって患者さん自身が選択し決定すること、と考えられています。情報は、自分の価値観(「ふつう」のセックス、「激しいセックス」、子供を育てる「喜び」、中絶による「罪悪感」など)や、情報の与え方(全体の情報量を10とすると、一方を8割、一方を2割伝えるような場合、相手が選んだ結論は自分の意見にはなってないだろうか)などで押しつけないことが大切です。日本では、既に選ばれたことについて十分に説明し同意を得ることと解釈されていることが多いような気がします。

★「コンプライアンス」と「アドヒアランス」

 あの患者はコンプライアンスが悪い、などとよくいいますね。「コンプライアンス」とは、「患者がどれだけ医療者の指示に従うことができるか」という意味です。アメリカでは、これにかわる新しい言葉が使われはじめています。それが「アドヒアランス」です。「アドヒアランス」とは、「患者がセルフケアや行動についてどれだけ意識化できているか」という意味です。要するに、患者自身が自分の問題やニーズを探し出す過程を援助し、その結果として提示されたニーズを満たすことが私たちの役割である、ということです。この言葉はすごく新しいのでおぼえておくとカッコイイかもしれません。

★「ユニバーサルプリコーション」

 直訳すると「統一的予防」です。院内感染予防の概念で、自分自身も含めて全ての人の血液・体液を感染しているものとして考える」ということです。ハワイでは、研修先の病院全てでこの考え方が実際のケアに反映されていました。日本では、病院によって手袋を使ったり使わなかったり、感染者とそうでない人を分けて考えたり(本当は検査をした時点に+か−だった、というだけ)まちまちですよね。この点の格差にとても驚きました。この先日本にもユニバーサルプリコーションの概念が浸透していければいいなぁと私個人は思っています。

 以上3点を挙げてみましたが、全体的な印象としては、ハワイで会った方々は皆自分に自信を持って、堂々と仕事をしている、ということです。これは素晴らしいことだと思いました。ハワイに行ってよかったです。でも、どんなにいい研修を受けても、それが患者さんに還元されなければ意味がないですから、これからの看護にどうやって役立たせるか、自分のできることは何か、それが次の課題になりそうです。

おすすめホームページ その1

広島エイズダイアル

URL=http://www.ddt.or.jp/~had-0812/


 広島エイズダイアル(HAD,代表:河野美代子さん)は広島のボランティア団体。地域でエイズ啓発活動、電話相談(пF082-541-0812 水・土曜)、患者支援活動をしています。


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T O P I C S

HIV感染者の障害認定始まる

☆身体障害認定のポイント☆

1998年4月からHIV感染者は身体障害者手帳が交付されることになりました。厚生省は、「ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害に係る身体障害認定に関する検討報告書」(平成9年12月、障害認定に関する検討会)を出しています。

<M E M O>

 厚生省「ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害に係る身体障害認定に関する検討報告書」はインターネットでご覧になれます。

http://www.mhw.go.jp/shingi/s1216-3.html

ソーシャルワーカーの援助が必要
■ 福祉制度や医療費の補助制度は複雑で、取り扱いも市町村、福祉保健センター、社会保険事務所などに分かれていて、病院にいるとわからないものがあります。医療ソーシャルワーカー(MSW)は、疾病や障害をもった人が利用できる医療・福祉制度についてのプロです。しかし私たち国立大学病院には配置されていません。ソーシャルワーカーである、県立広島病院健康推進センターの平岡 毅さん(Tel:082-254-1818、内線1125)と、社会保険広島市民病院総合相談室の塚本弥生さん(Tel:082-221-2291(代))は、中四国エイズセンターのスタッフです。ご不明なことがあればご相談下さい。
 
身体障害者手帳のメリット
■ この制度の精神や歴史・経緯については省略します。HIV感染者が利用できる保健福祉サービスとしては、@ホームヘルプサービス、デイサービス、ショートステイ、A更生医療の給付、B税制上の優遇措置などがあります。中でも最もありがたいのは、Aの更生医療で医療費の軽減です。すべて手帳の交付で始まります。広島の輸入血液製剤によらない感染者の大半が6月の時点で手続き中、あるいは完了しました。
 
診断書を書くのは指定医療機関
■ 申請に必要な書類のうち1番目は「手帳交付申請書」です。患者さんが書き、写真を添えます。これに添えて出す2番目の文書は「身体障害者診断書・意見書(免疫機能障害)」です。これを書くことができるのは、指定医療機関の医師(15条という)で、具体的にはエイズ拠点病院です。HIV感染者を診ている医師は次の項目のデータをつけて、患者さんを拠点病院に紹介する必要があります。
 
判定に必須の項目
■ 外部障害と違って指定医師が診断書を書くためには過去の検査結果が必要です。紹介医はHIV抗体(日付、方法、結果)の他、何度か測定した[ ]内の項目の最悪値2回分の日付と結果[CD4数、白血球数、Hb値、血小板値、HIV RNA値]をつけて下さい。データがないと、4週間以上あけて患者さんに2回以上拠点病院に来院して頂かなければなりません。症状としては、全身倦怠感、体重記録、発熱、下痢、嘔吐、日和見感染、生活制限、労働制限など【表1・表2】です。例えば、AZTによる白血球減少・貧血、プロテアーゼ阻害剤による頻回の下痢などの薬の副作用や、厳格な服薬遵守なども含まれます。
 
手帳に病名はどう書かれるか
■ 障害名の「免疫機能障害」と「等級」です。HIVとかエイズという言葉は記されません。この他ご本人を特定するために住所と写真がつきます。等級は1級、2級、3級、4級の4段階です【表3】。
 
事務やサービスは市町村レベル
■ 身体障害者福祉法の実務や各種サービスは、都道府県レベルではなく、市町村レベルです。申請書は市町村の所轄課(障害福祉課などの名称)に提出します。私たちの経験ではMSWが事前に連絡することにより、カウンターではなく個室で対応してくれました。書類は都道府県レベルで設置されている社会福祉審議会で判定されます。従来、手帳の発行日は社会福祉事務所長が決済した時でしたが、遅れを生じさせないために受理した日にさかのぼります。
 
医療費の軽減が得られる更生医療
■ 更生医療は1級から4級まで適用されます。更生医療の範囲は、診察、薬剤または治療材料の支給、医学的処置・手術など、入院、看護、移送などで現物給付が原則です。手帳に記載されている障害について行われるので、抗HIV薬、日和見疾患の治療に限られます。更生医療を行う医療機関は「更生医療指定医療機関(19条)」でなければなりません。開業医の場合でも拠点病院等と連携があれば指定は可能です。問題は、エイズで問題が多い歯科・口腔外科領域です。歯科医療の90%以上が個人医院ですから、更生医療の指定を受けるのは難しいようです。広島大学歯学部附属病院は指定医療機関になりました。

表1【検査所見・日常生活活動制限】

@白血球数について3,000/μl未満の状態が4週以上の間隔をおいた検査において連続して2回以上続く
AHb量について男性12g/dl未満、女性11g/dl未満の状態が4週以上の間隔をおいた検査において連続して2回以上続く
B血小板数について10万/μl未満の状態が4週以上の間隔をおいた検査において連続して2回以上続く
Cヒト免疫不全ウイルス-RNA量について5,000 コピー/ml以上の状態が4週以上の間隔をおいた検査において連続して2回以上続く
D1日1時間以上の安静臥床を必要とするほどの強い倦怠感及び易疲労が月に7日以上ある
E健常時に比し10%以上の体重減少がある
F月に7日以上の不定の発熱(38℃以上)が2か月以上続く
G一日に3回以上の泥状ないし水様下痢が月に7日以上ある
H一日に2回以上の嘔吐あるいは30分以上の嘔気が月に7日以上ある
I表2に示す日和見感染症の既往がある
J生鮮食料品の摂取禁止等の日常生活上の制限が必要である
K軽作業を越える作業の回避が必要である

表2【日和見感染症】

1.口腔内カンジダ症(頻回に繰り返すもの)
2.赤痢アメーバ症
3.帯状疱疹
4.単純ヘルペスウイルス感染症(頻回に繰り返すもの)
5.糞線虫症
6.伝染性軟属腫
7.その他
 

表3【障害程度等級認定基準】

1級:ヒト免疫不全ウイルスに感染していて、次のいずれかに該当するもの
1.CD4陽性Tリンパ球数が200/μl以下で表1の6項目以上に該当する状態

2.回復不能なエイズ合併症のため介助なくしては日常生活がほとんど不可能な状態

2級:ヒト免疫不全ウイルスに感染していて、次のいずれかに該当するもの
1.CD4陽性Tリンパ球数が200/μl以下で表1の3項目以上に該当する状態

2.エイズ発症の既往があり表1の3項目以上に該当する状態

3.CD4陽性Tリンパ球数に関係なく表1の1から4までの1つを含む6項目以上に該当する状態

3級:ヒト免疫不全ウイルスに感染していて、次のいずれかに該当するもの
1.CD4陽性Tリンパ球数が500/μl以下で表1の3項目以上に該当する状態

2.CD4陽性Tリンパ球数に関係なく表1の1から4までの1つを含む4項目以上に該当する状態

4級:ヒト免疫不全ウイルスに感染していて、次のいずれかに該当するもの
1.CD4陽性Tリンパ球数が500/μl以下で表1の1項目以上に該当する状態

2.CD4陽性Tリンパ球数に関係なく表1の1から4までの1つを含む2項目以上に該当する状態

 

更生医療給付申請書が必要
■ 手帳を持っている障害者が更生医療を受ける場合、「更生医療給付申請書」を自分で書き、指定医療機関の指定医から「更生医療要否意見書」を書いてもらって市町村の窓口に提出します。所得調査などが行われます。自治体の「身体障害者更生相談所」で判定されて「更生医療券」が交付されます。手帳さえあれば、こちらは"申請中"でお金を払わなくて済むでしょう。
 
重度医療という制度もある
■ 「重度心身障害者医療費助成制度(重度医療)」は手帳を持っている人(広島県は1〜3級、全国では2級までが多い)を対象に市町村が実施します。手帳とは担当の課が違います(福祉課、民生課、厚生課など)。対象の疾病は限定されず、自己負担分をみてくれます。
 
障害年金も得ることができる
■ 年金を一定限度払ってきた人は積み立ててきた人が、受給年齢になる前に障害者になったときに年金が受け取れる仕組みです。
 
MSWの支援を依頼することを勧めます
■ 更生医療と重度医療の使い分けは本人に有利になるよう配慮されるそうです。従来、すべての申請は本人が役所に出向いてオープンカウンターで話し合う必要がありました。今回、プライバシー保護の目的で、MSWなど代理人による手続きや郵送も認められることになりました。患者さんによっては家族に自分がHIV感染者であることを伝えていない人もいます。役所から書類が郵送されるとまずいかもしれません。このような場合はどうするか、前もって決めておく必要があります。どのようにすればよいか、是非ご本人をMSWに紹介してあげて下さい。【END】

【中四国各県市のエイズ対策担当者名簿】

広島県 ■福祉保健部健康対策課 結核感染症係 〒730-8551 広島市中区基町10-52

 пF082-228-2111(内3242) Fax:082-212-3578 係員:信川正次

広島市 ■広島市保健所地域保健課 保健予防係 〒730-0043 広島市中区富士見町11-27

 пF082-241-7401(内5826) Fax:082-241-2567 係員:草永恭史

鳥取県 ■福祉保健部健康対策課 予防係 〒680-8570 鳥取市東町1-220

 пF0857-26-7153 Fax:0857-26-8143 藤井紀男 (課長)

鳥取県 ■健康福祉部薬事衛生課 感染症係 〒690-8501 松江市殿町1

 пF0852-22-5111(内5254) Fax:0852-22-6041 係員:児玉俊夫

岡山県 ■保健福祉部健康対策課 感染症対策係 〒700-8570 岡山市中山下2-4-6

 пF086-224-2111(内2710) Fax:086-225-7283 係員:内川洋之

山口県 ■健康福祉部健康増進課 感染症係 〒753-8501 山口市滝町1-1

 пF0839-33-2956(内2951) Fax:0839-33-2969 係員:矢端順子

徳島県 ■保健福祉部健康増進課 疾病対策係 〒770-8570 徳島市万代町1-1

 пF0886-21-2500 (0886-21-2224) Fax:0886-21-2841 係員:林令子

香川県 ■健康福祉部薬務感染症対策課 防疫係 〒760-8570 高松市番町4-1-10

 пF087-831-1111(内2386) Fax:087-861-1421 係員:山下利美

愛媛県 ■保健福祉部健康増進課 感染症対策係 〒790-8570 松山市一番町4-4-2

 пF089-941-2111(内3140) Fax:089-921-5609 係員:松岡真仁/井出本大賢

高知県 ■健康福祉部健康対策課 感染症班 〒780-8570 高知市丸ノ内1-2-20

 пF0883-23-1111(内2434) Fax:0888-73-9941 係員:湯村育代

おすすめホームページ その2

広島大学原医研血液内科

URL=http://www.ipc.hiroshima-u.ac.jp/~hirokos/

 医局長が自製した、いわゆる教室紹介ものです。内容は教室の沿革、病院での診療、学生教育、研修医教育、研究状況など。外来診察担当医の配置表に、HIV感染症と書いてあります。


抗HIV薬に耐性のHIVは遺伝子検査でわかるか?

《臨床とウイルス量から見た抗HIV薬への耐性に関係するHIV遺伝子の変異》

出典:The Stanford Guide to HIV/AIDS Therapy 6th edition, 1997, p.7

■ ウイルスでも一般細菌や結核菌のように、薬剤感受性試験が手軽にできるようになることを誰もが望んでいます。抗HIV薬が服用を続けていると効かなくなることは、HIV RNAの再上昇でわかります。まったく効かないとHIV RNAが10の5乗以上のレベルにぐんぐん上昇します。こうなると薬とは言えず毒でしかありません。ところがHIV RNAは定量できるけど、横這い状態の患者さんもみられます。休薬するとドンと増えます。つまり抑えられるHIVのストレインには効いていたのでしょう。
 
■ 変異した耐性HIVでは、HIVの逆転写酵素や蛋白分解酵素の構造と機能が変わっているのです。これらの酵素を直接調べることは困難です。最近進歩した遺伝子検査を利用すると、HIV遺伝子のどこがどう変わったか調べることができます。つまり耐性遺伝子の検査です。アメリカの民間検査センターの中には、検査を受注している所がありますが、日本にはありません。日本でも、国立感染症研究所など限られた施設で研究的に実施されています。
 
■ 難しいのは遺伝子解析結果の解釈です。ある遺伝子変化は確実に耐性と信じられるものもあり、別の変化は耐性らしいという程度です。調べた遺伝子が患者さんの体内のどのくらいのHIVを反映しているのかもわかりません。たった1ヶ所の変異で完全耐性になることもありますし、多数の変異が重なって耐性になる場合もあります。また、AZT(ジドブジン)に耐性を示すある種の変異が、かえって3TC(ラミブジン)に対し感受性が出る場合もあります。以下に示すデータもまだ発展途上のものと考えて下さい。【END】

【抗HIV剤に対する耐性遺伝子】

ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(NRTI)に対する耐性遺伝子

◆コドン75:d4T

◆コドン215±(41, 67, 70, 219):AZT

◆コドン74または69または184:ddI,ddC

◆コドン184:3TC

◆コドン215+(74または65または69または184):AZT,ddI,ddC,3TC

◆コドン151±(62,75,77,116):AZT,ddI,ddC,3TC,d4T

非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(nNRTI)に対する耐性遺伝子

◆コドン103または106または181または188:ネビラピン

プロテアーゼ阻害剤(PI)に対する耐性遺伝子

◆コドン48または90±(63,71):SQV

◆コドン30±(36,46,71,77,88):NFV

◆コドン48+90:SQV, おそらくRTVとIDVは部分耐性

◆コドン46または82+以下の2ヶ所以上(10,20,32,54,63,64,71,73,77,84,90):RTV,IDV

出典:JAMA 277:145, 1997 J Virology 70:8270, 1996


前ほど話題にならないけれど・・

日本のエイズ流行は終わっていない

新しい情報はインターネットで
■ 薬害エイズの報道が下火になって、日本のHIV感染症の流行は終わってしまったかのようなムードがあります。日本のHIV感染症の現状については、厚生省のエイズ動向委員会が2ヶ月に1回公式発表をしていますし、年度末には詳細な報告をしています。これらの報告は、インターネットなら厚生省(URL=http://www.mhw.go.jp)、エイズ治療研究開発センター(URL=http://www.acc.go.jp/)のホームページで見ることができます。
 
発病→診断のケースが増加
■ 平成10年5月26日、エイズ動向委員会の結果が発表されました。要約しますと、平成10年3月から4月末日までの報告は、エイズ患者37名(前回36)、HIV感染者74名(前回59)の合計111名でした。輸入血液製剤による感染をのぞき、累計のHIV感染者の報告数は4,000名を越えています。2ヶ月毎の報告数はほぼ100名で減りません。感染地域も患者・感染者の半数である53名が、国内の異性間の性的接触によるものであり、関東・甲信越ブロックに大多数が集中しています。にもかかわらず、最近では検査件数・相談件数が減少傾向を示しています。一方、発病して初めて診断される数がどんどん増えています。
 
日本国内における輸血による感染
■ 輸血が原因と疑われるHIV感染例はこれまでに4件あります。これらのうち輸血に使用された血液がHIV抗体陰性でありながら、HIV RNAが陽性であったことが証明された例は1例だけです。これ以外の例については献血者の記録が廃棄されており、調査を続行中ですが、証明には至らない可能性もあります。
 
HIV抗体陽性献血者とHIV感染の拡大との関係
■ 献血者におけるHIV抗体陽性率は、日本のHIV感染の拡大をよく示しています。献血者は自分自身、少なくとも献血できる健康な体と思っている人たちです。HIV感染者の年齢分布は、献血者の年齢分布とほぼ似ていることも大切です。【表】のように毎年発見される献血者の中のHIV抗体陽性者の件数は増加しており、1998年度は1,961,683件のうち23件の陽性者が発見され、10万人あたり1.172人になりました。残念なことに日本赤十字社は沈黙を守っています。プライバシーに属するものは別として、新規供血者かリピーターか、国籍、地域、年齢、採血所か移動献血車か、告知の有無、医療機関受診の有無などの情報を公表すべきだと思います。
 
増加傾向のかげには・・
■ 先進国では軒並みに新規感染者数の減少が報告されているのに、増加傾向を示しているのは先進国では日本だけです。これについては、目新しい事件がないと報道しないマスコミ、有効な予防策を打ち出せていない行政などに責任があるのかなと感じます。 【END】

【表】献血件数及びHIV抗体陽性件数

献血件数

(検査実施数) 件

陽性者数

( )内女性 件

10万人当たり

     人

1987年 8,217,340 11( 1) 0.13
1988年 7,974,147  9( 1) 0.11
1989年 7,876,682 13( 1) 0.17
1990年 7,743,475 26( 6) 0.34
1991年 8,071,937 29( 4) 0.36
1992年 7,710,693 34( 7) 0.44
1993年 7,205,514 35( 5) 0.49
1994年 6,610,484 36( 5) 0.55
1995年 6,298,706 46( 9) 0.73
1996年 6,039,394 46( 5) 0.76
1997年 5,998,505 54( 5) 0.90
1998年 1,961,683 23( 2) 1.17

厚生省研究班がHIV母子感染の前向き研究

「検査材料送付マニュアル」を配布
■ 厚生省HIV疫学研究班の母子感染疫学研究グループ(防衛医科大学校分娩部 喜多恒和先生)では、母子感染の前向き研究を開始しました。研究班ではHIV感染妊婦と出生した児の血液検体提供協力を依頼しています。このために「母子感染検査材料送付マニュアル」をエイズ拠点病院に配布しました。
 
遺伝子検査が無料でできる
■ HIV感染妊婦にとって、抗HIV剤を飲むかどうか、さらに併用療法をするかどうか、選択できることが大切でしょう。さらに帝王切開も選択できる必要があります。生まれた赤ちゃんにHIVが感染したかどうか、15ヶ月まで定期的に観察されます。この診断のために鋭敏で、しかも正確な遺伝子検査が無料でできることはメリットでしょう。一方、デメリットはあまりないと思われます。
 
3剤療法における胎児への安全性は?
■ 母子感染率を低下させるにはアメリカではAZT単剤が推奨されています。しかしこれは大規模な治験から導かれたものだからです。母体のウイルス量を可能な限り低下させることが感染率を低下させると予想されますので、2剤、さらに3剤の併用療法の方が有効性が高くなると期待できます。特にこれまで3剤併用療法をしていた女性が妊娠した場合、2剤を中止してAZT単剤にするのはよくない選択です。ただ3剤の児への安全性は確立されていません。つまり母体にとって良くても、赤ちゃんにとっては実験的治療です。十分なインフォームド・コンセントが必要です。
 

<HIV感染妊婦を担当のドクターの方へ>

HIV感染妊婦のケアを担当される医師は、必要だと思われた時に下記の連絡先にご連絡下さい。より詳細なマニュアルなど一式が送付されてきます。母子感染検査は国立感染症研究所・エイズ研究センターで行います。検査は全て無料です。END】

<可能な検査>

1.ウイルス分離(細胞及び血漿)

2. PCR

3.主要中和領域のシークエンスによる HIV-1サブタイプの決定

4.ウエスタンブロット

5.血球算定(白血球数、リンパ球数、CD4細胞数、CD8細胞数)

6.薬剤耐性変異部位のシークエンス

7.ウイルス量

< 連絡先 >

グループ長 喜多 恒和

e-mail : kitat@ndmc.ac.jp

事務局 吉野直人

e-mail : yoshino@nih.go.jp

〒162-8640 東京都新宿区戸山1-23-1

国立感染症研究所エイズ研究センター

    Tel : 03-5285-1111(ext2737)

    Fax : 03-5285-1183

おすすめホームページ その3

☆ 厚生省 ☆

URL=http://www.mhw.go.jp

 厚生省の機構、報道機関への発表資料、審議会報告書などが経時的な一覧として、あるいは各部局別に公開されています。厚生科学研究費の募集やエイズ動向委員会の発表も載っています。

☆ エイズ治療・研究開発センター ☆

URL=http://www.acc.go.jp/

 国立国際医療センター病院の中にできたエイズ治療・研究開発センター(ACC)のHP。ACCのHPは、「エイズ治療研究開発センター情報」・「学会研究関連情報」・「厚生省コーナー」・「関連ホームページ・リンクメニュー」に分かれています。どれも役に立つ情報が満載されています。

おすすめホームページ その4

☆ 中四国エイズセンター ☆

URL=http://www.aids-chushi.or.jp/

 1998年1月29日にオープンしました。カウンターで見ると5ヶ月でおよそ5,000人の来訪者がありました。仮に一人で5回訪問したとして、1,000人の人が「ここにこのような情報がある」ことを認識していることになります。常に新しい情報を追加して“常連さん”を逃さないように努力します。

【CONTENTS】

1.中四国エイズセンターの紹介

2.最新ニュースから

3.エイズQ&A

4.HIV感染症の診断と治療

5.エイズ関連用語集

6.関係する読み物

7.血友病と関連疾患について

8.pdf出版

9.お勧めブックマーク

10.中四国エイズセンターへの手紙

ご意見ご要望等は info@aids-chushi.or.jp まで


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おくすり N E W S

クロトリマゾールトローチが治験開始予定に

= 中四国地方の治験参加施設は広大病院 =

■ HIV感染者の口腔カンジダ症に対し、クロトリマゾール・トローチ(アメリカの商品名:マイセレックス・トローチ、治験名:BAY b 5097)の臨床試験が始まることになりました。本剤はバイエル薬品のもので、厚生省から希少疾病用医薬品の指定を受けました。治験計画が厚生省の承認を得られたら、治験実施医療機関と契約が交わされ、実際の治験が始まります。
 
■ クロトリマゾールはイミダゾール系の抗真菌薬で、エンペシドの商品名でクリーム剤、液剤、膣錠が古くから使われています。アメリカではトローチ剤が口腔カンジダ症の治療と予防の認可を受けています。1回1錠(10mg)、1日5回口の中でゆっくり溶かします。治療期間は14日間となっていますが、有効例では数日以内によくなります。アメリカのデータでは、57例中28例で真菌消失と臨床症状の治癒・改善が認められました。真菌消失が得られなかったものを含めて臨床的な改善効果は55例です。副作用は主に嘔気、嘔吐などの消化器症状、口渇、口腔痛、口腔潰瘍、苦みなどの局所症状ですが、忍容性は良好でした。
 
■ HIV感染者の免疫不全が進行すると、日和見感染症を起こしやすくなり、中でも口腔カンジダ症の頻度は非常に高いものです。日本では経口または口腔ゲルなどの抗真菌剤がありますが、より多くの治療オプションが望まれます。本剤は口腔内で徐々に溶かす局所療法であり、食事の有無や場所を選びません。また嚥下障害がある患者でも使いやすいものです。私も舐めてみましたが、お菓子のような感じでした。
 
■ 治験実施医療機関は18施設(ブロック拠点病院は4ヶ所)です。中四国では広島大学医学部附属病院だけですから、本剤の治験に関心のある医師あるいは患者さんはご連絡下さい。 [TAKATA]

4番目のHIVプロテアーゼ阻害剤

「ビラセプト錠」発売

■米国Agouron社と日本たばこ社が開発したネルフィナビル(NFV)が、ビラセプト錠という商品名で発売になりました。1錠は250mgで、成人では1回3錠、1日3回必ず食後に内服します。HIVプロテアーゼ阻害剤としては本邦4番目になります。効能効果はエイズ、CD4+数が500/μl以下の症候性及び無症候性HIV感染症です。中四国地方では日本ロシュ社の販売網で販売されます。
 
■ 先行のインジナビル、リトナビルに比較して、有効性は保たれながら比較的副作用が少ないこと、またサキナビルに比較して吸収が良いのでより有効性が期待できること、これら3剤とは薬剤耐性のプロフィールが異なることなどが特徴です。このため初回投与のプロテアーゼ阻害剤として第一選択薬になる可能性があります。
 
■ 最も多い副作用は下痢で、海外では42%にロペラミドの併用が行われています。下痢をしていても血中濃度は変化ないようです。また国内では皮疹が38例中9例に発現しています。
 
■ 他のプロテアーゼ阻害剤と同様、肝臓の薬物代謝酵素チトクロームp450(CYP3A4)と親和性が高く、同酵素で代謝される薬物の濃度が上昇する恐れがあります。このためテルフィナジン、アステミゾール、シサプリド、トリアゾラム、ミダゾラム、アルプラゾラム、バッカク誘導体、アミオダロン及びキニジンとの併用は禁忌となります。
 
■ 他のプロテアーゼ阻害剤と併用すると、お互いに血中濃度を高める可能性があり、いわゆるダブル・プロテアーゼ療法は慎重さが必要です。薬物血中濃度は大手の検査会社BMLが研究レベルで有料受注しています。
 
■ また、リファンピシンは同酵素を誘導するので、本剤の有効血中濃度が得られなくなる恐れがあり、併用禁忌となります。[TAKATA]

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A Look at BOOKS 文献紹介

<< アメリカの抗HIV療法ガイドライン日本語翻訳版 >>

■ アメリカの保健福祉省は1998年4月24日に、「成人並びに青年のHIV感染者における抗レトロウイルス薬の使用に関するガイドライン(原題:Panel on Clinical Practices for the Treatment of HIV Infection : Guidelines for the Use of Antiretroviral Agents in HIV-Infected Adults and Adolescents.)」を公表しました。
 
■ 本書は(株)医学書房によって日本語に翻訳され出版されました。同社は、抗HIV薬ゼリット(d4T)を発売している吉富製薬の関連会社で、吉富製薬のMRが無料配布しています。本書は非売品です。必要な方は、お近くの担当者にお申し出になるとよいでしょう。
 
■ 付録の図表類も役に立ち、非常に影響力の大きい文書と思います。抗HIV療法を行っている全ての医師が参考にして欲しいと思います。
 
■ この他アメリカは「性感染症治療のガイドライン」、「小児HIV感染症治療のガイドライン」、「医療従事者のHIV曝露事故後の治療ガイドライン」を発表しています。

原文はCDCのホームページから入手できます

http://www.cdc.gov/epo/mmwr/


<< 医師・看護婦・医療従事者のためのHIV診療対策ガイド >>

著者:矢野邦夫

出版:日本医学館 (\3,000)

■ 県西部浜松医療センターの矢野邦夫先生が、「医師・看護婦・医療従事者のためのHIV診療対策ガイド」という本を出されました。これまでに矢野先生は同社から「HIVマニュアル」と「HIV院内感染対策」を出版されています。
■ 下記のように8つのパートに分かれ、さらにその下に81の小項目に分けて記述されています。言葉も簡潔明瞭で理解しやすいものです。
■ 最近認可になったネルフィナビルについての記載が間に合わなかったことは残念です。日本には患者さんに読むことを勧める本がなかったのですが、この本は勧めてよいと思います。

CONTENTS

Part 1 HIVに感染したら

Part 2 HIVと日常生活

Part 3 HIVとエイズの基礎知識

Part 4 エイズとその特徴的症状

Part 5 その他の症状

Part 6 検査

Part 7 HIV感染症の治療

Part 8 抗HIV剤の併用禁忌薬剤と併用に注意を要する薬剤

出典:インフェクションコントロール別冊(通巻23号)


《病院における隔離予防策のためのCDC最新ガイドライン》

原著:Julia S. Garner

原題:Guideline for Isolation Precautions in Hospitals

翻訳:向野賢治(福岡大学第二内科)

出版:メディカ出版 (\1,262)

■ アメリカのCDC(疾病予防管理センター)は医療機関での感染予防対策について、様々な勧告を行っています。原文は最新のもので、アメリカ国内向けですが、世界的な影響力を持っています。 本書は向野先生により翻訳され、医学書専門書店や専門書を揃えた大型書店で扱っています。

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院内のエイズ研修会に呼んで下さい!

中四国エイズセンターの大きな役割は、医療従事者のためのエイズ教育です。拠点病院で職員研修会を企画されたら教えて下さい。中四国エイズセンターから講師派遣をすることができます。各県庁か広島県に連絡頂けたら経費補助が可能です。

<連絡先>

広島県健康対策課 :082-228-2111(内線3242)

平成10年度

中国・四国ブロック内拠点病院等連絡協議会および講演会

日時:1998年7月15日10:00-15:30

会場:KKR広島(広島市中区東白島19-65)

内容:連絡協議会(クローズド)、平成9年度報告と平成10年度計画: 講演会(セミオープン)、講演会:「レッドリボンホスピタル HIV陽性者 手術90件の経験から」河崎則之(国立療養所福 井病院院長)

参集:厚生省、中国四国ブロック拠点病院、広島県臨床心理士会、中国四国各拠点病院、中国四国各県、広島市、広島県

担当:広島県健康対策課結核感染症係

tel:082-228-2111(ext.3242)fax: 082-212-3578

西条中央病院エイズ研修会 

日時:1998年7月18日13:30〜15:30

会場:西条中央病院(愛媛県)

講師:高田 昇(広大病院輸血部)

演題:「エイズの現状と最新治療」

共催愛媛県、広島県、中四国エイズセンター、西条中央病院

連絡先:愛媛県健康増進課感染症対策係

:089-941-2111(ext:3141)

平成10年度

山口県エイズ拠点病院連絡会議

日時:1998年7月22日14:00-16:00

会場山口県総合保健会館健康づくりセンター第二研修室

講師:高田 昇(広大病院輸血部)

演題:「エイズの現状と最新治療」

連絡先:山口県健康増進課感染症係

tel:0839-33-2956,Fax:0839-33-2969

国立山陽病院エイズ研修会

日時:1998年7月29日14:00-16:00

会場:国立山陽病院会議室

講師:高田 昇(広大病院輸血部)

演題:「エイズを診るのは良い病院」

共催山口県、広島県、中四国エイズセンター、国立山陽病院

連絡先:看護部東城さん(tel:0836-58-2300)

市立八幡浜総合病院エイズ研修会

日時:1998年8月22日13:30〜15:30

会場:市立八幡浜総合病院

内容:「職員エイズアンケート」「エイズ診療のコツ」

講師:高田 昇(広大病院輸血部)

共催:愛媛県、広島県、市立八幡浜総合病院中四国エイズセンター

担当:内科 加藤寿一Dr

tel:0894-22-3211 fax:0894-24-2563

連絡先:愛媛県健康増進課感染症対策係

tel:089-941-2111 ext.3141

社会保険広島市民病院

エイズ研修会(予定)

日時:1998年10月27日18:00-20:00

会場:広島市民病院講堂

講師:高田 昇(広大病院輸血部)

演題:「エイズ診療のコツ」(仮題)

共催:広島市民病院、中四国エイズセンター

担当:内科 小田健司Dr

tel:082-221-2291 fax:082-223-1447

第12回日本エイズ学会総会

日時:1998年12月1・2日

会場:シェーンバッハサボー(東京千代田区)

総会長:東京医科歯科大学医学部微生物研究室 山本直樹教授

■ 本学会は、基礎ならびに臨床のいわゆる“医学”研究者にとどまらず、看護、行政、教育、心理・社会、ボランティア、HIV感染者が一同に会して討議するユニークな学会です。日本のエイズシーンが2日間でわかります。

◇ 演題発表は正会員に限られています。まず入会手続きをして下さい。◇

【会員登録および連絡先】

〒113-8622 文京区本駒込5-16-9

(財)日本学会事務センター日本エイズ学会係

Tel: 03-5814, Fax:03-5814-5825

【編集後記】★このニュースレターは厚生省研究班(吉崎班)の活動として作成しています。全国のブロック拠点病院、中四国の拠点病院、血友病診療機関、エイズボランティア団体、行政関係などに配布しています。Vol.1の1号(400部)、2号(600部)はもう手持ち分がありません。ご希望の患者さんにはコピイしてあげて下さい。★前号の記事《HIV感染症に対する抗ウイルス療法に関する国際委員会勧告》について、ある先生からクレームを受けました。問題は「患者さんに症状が現れてから治療を開始する、CD4数が減ってから治療する、という考えは大規模な治験によって否定されたのです」と書いた点です。確かに国際AIDS協会(IAS)の勧告はあくまでも任意団体のものであり、“否定された”と言い切るのは言い過ぎでした。その後に発表されたアメリカ保健福祉省の治療ガイドラインは内容がわずかに違っています。全体として“早期治療”の流れは確かと思われますが、細部は今後変わるでしょう。[TAKATA] ☆4月から新任で中四国エイズセンター事務局の情報担当員をしています。中四国からより良い情報をより多くの方にお届けできるようがんばります。ご意見、感想、要望をお待ちしています。[OE]

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