FOR GENERAL
HIV感染症に対して、1997年からHAART(Highly Active Antiretroviral Therapy:多剤併用療法)という治療ができるようになり、HIV感染者の生命予後は飛躍的に延びました。最近ではARTまたはcARTとも呼ばれるようになった抗HIV療法は、核酸系逆転写酵素阻害剤を2剤、それらに加えてプロテアーゼ阻害剤を1剤か2剤、または非核酸系逆転写酵素阻害剤を1剤、もしくはインテグラ−ゼ阻害剤を1剤組み合わせて内服するのが基本です。
現在では薬も改良され、副作用が非常に少ないものや1日1回1錠でよいものなどが使用できるようになりました。患者さんの服薬の負担は劇的に改善しましたが、HIVを体内から排除する根治薬はありませんので、一生飲み続けていかなくてはなりません。
デンマークで行われた調査※1によると、1996年以降ARTを受けた25歳のHIV陽性者では、その後の平均余命は35年と報告されました。しかし、その後もHIV陽性者と非陽性者の差は縮まり続けています。アメリカの調査※2では、CD4数>500 /μLで治療を開始した20歳時のHIV陽性者の平均余命は、54.5歳と非陽性者と変わらないと報告されています。
抗HIV薬がなかった時代には、10年くらいしか生きられないと言われていたHIV感染症でしたが、ウィルス発見から約20年が経過し、治療の進歩によりHIV感染患者の生命予後は飛躍的に延びています。
推奨度の違いはあれ、原則的に診断したら速やかに治療開始です。しかしながら、長期間服用し続けることによる“飲み疲れ”の懸念やCD4数>500 cell/μLで始めると自立支援医療制度利用のメリットが小さいなどの問題があり、現実的には困難なことが多いです。
詳細は、最新のHIV感染症治療研究会発行の『治療の手引き』や、厚生労働省研究班のガイドラインを参照して下さい。
適切な治療開始時期を逃さないために、早期にHIV感染症を見つけることと、 定期的に受診することが重要となります。