HIVの院内感染と対策
広島大学医学部附属病院 輸血部 高田 昇

1.HIV感染症は治療できる病気
  • HIV感染症は一つの疾病以上でも以下でもない。HIV RNA定量検査という病態観察のマーカーが登場し、プロテアーゼ阻害剤などの有効な抗HIV薬が入手できるようになり、いくつかの日和見感染症も予防ができるようになった。発病しても治療できる病気は多い。私たち医療者の仕事は発病を予防し、発病しても治療して患者を社会に帰すことである。エイズは難病であり、多くの人材と資源を投入する必要がある。
  • HIV感染症は世界的な規模で広がっている。患者は医療を求めて来院する。HIV感染症は新しい疾患であるから大半の医療者は教育を受けていないが、医療者は色々な方法を通じて正確な知識を得なければならない。今準備を始めればまだ間に合う。エイズには“気持ち悪い”“怖い”“自業自得だ”“悲惨だ”という幾重ものネガティブなイメージが焼きつけられてしまった。作られたイメージは学習により修復可能である。
  • HIVの医療者への感染は頻度が高くはないが、大きな関心事となっている。どんなに努力をしても医療の仕事を続ける限り、100%防止できるわけではない。本文は感染事故を最大限防止することを目的に現在わかっていることと対策について述べる。
 
 
 
      第2章へ続く